--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2009-04-25(Sat)

二年次05月上旬:「四人の温泉旅行」(18歳未満閲覧禁止)(後編)

true tears 二次創作小説です。本編全話視聴終了済みの方のみご覧ください。



二年次05月上旬:「四人の温泉旅行」(18歳未満閲覧禁止)(後編)
           この話は前編中編からのつづきになります。







(9)アルコールによる認識力低下

酔いが回ってきたのだろう。眞一郎は真っ赤な顔をしている。酒蔵の息子にしては少々弱めという気がする。まだ3杯位しか飲んでない筈なのに。正直飲み比べとか出来るかもと期待してたのだが読みが外れたようだ。そんなことを考えながら俺はコップの中の酒を飲み干した。
「三代吉はすごいね」
愛ちゃんは空のコップを受け取りつつ素直に俺への感心を示した。愛ちゃんが下戸なのはちょっと残念だったが、湯浅さんみたいに飲むだけ飲んですぐに寝てしまうよりはいいだろう。その愛ちゃんは酒瓶をほぼ垂直に立てて最後の一滴までコップに注ぎ込んだ。そろそろ潮時かも知れない。愛ちゃんから最後の酒を渡された俺がそう感じていると、眞一郎が顔を仰ぐ手をとめて立ち上がった。
「ちょっと夜風に当たってくるわ」
「あ、俺も付き合うわ」
俺はそういうと酒を一気に飲み干した。
「お前は全然酔ってないように見えるんだが」
「ちょっと散歩もしたいしな」
「なら、私もつきあうよ」
愛ちゃんも俺たちに同行する意を示した。俺たちは立ち上がると部屋を後にしようとする。その時愛ちゃんが後ろを振り向いて尋ねた。
「比呂美ちゃんはどうするの?」
眞一郎は少し考えた後で答えを出す。
「放っておこう。寝かせておいたほうがいいと思うから」
まあ旅館の中だし危ないような目にあうこともないだろう。そして俺たちは旅館の外へと繰り出すことにする。
「何か飲みたいな。コンビニとか近くあるか?」
「どうだろ?それより秘宝館とかやってないかな」
「お前な…」
「秘宝館って何?」
そんな無駄話をしながら俺は袖の下をまさぐる。だがそこには期待したものは存在しなかった。
「財布ないわ。あったほうがいいよな。取ってくるから先いっててくれよ」
「おう」
「早く来てね」
眞一郎も愛ちゃんもちゃんと財布を持ってきているようだ。用意がいいというかなんというか。俺は急いで部屋まで戻ることにする。

部屋では相変わらず湯浅さんが横になって寝息を立てていた。俺は彼女を起こさないように忍び足で進むと半腰で自分の荷物を漁る。そして俺は財布を見つけると同時に背後に人の気配を感じた。振り返ろうと思うや否や俺の尻に何かが押し付けられる。
「な!?」
後ろを見て愕然とする。そこには俺の尻に頬擦りをする湯浅さんの姿があった。
「しんひちろうくん…ようやくふらりっきりになれらわね」
俺は思わずしゃがんだままダッシュで後ずさってしまう。どうやら彼女は俺を眞一郎と間違えているようだ。
「ち、ちが…」
四つん這いになっている彼女は胸元から深い谷間を覗かせている。生唾を飲み込む俺はまともに声を出すこともできない。湯浅さんは四つん這いのままで俺に歩み寄ってきた。俺も後ずさろうとするがすでに壁際で後ろに下がることもできない。
「ろうしらの?あ、そうゆうプレイ?いいわ、おにぇいさんがおしえれあれる」
湯浅さんはくすくすと笑いながら俺に這いよってくる。俺は動くことも出来ずに彼女の接近を許してしまう。甘い吐息と石鹸の匂い。そして湯浅さんは俺の浴衣を肌蹴させると俺の胸から腹へと右手を滑らせていき、そしてトランクスを下にずらす。するとすでに元気一杯になっている俺の息子が姿をさらけ出した。
「あれ、ひつもよりおおきいよ?」
そういうと彼女は俺の竿をしごいた。うまい。うますぎる。男のツボの何たるかをちゃんと理解している。これが経験者というものなのか。絶妙なカリへの刺激が俺に更なる興奮を呼び起こす。そして彼女は手を止めると俺のモノをじっと見つめたかと思うとやがてそれに顔を近づける。
「ちょ、ちょっ!」
制止を求める俺の声が耳に入らないのだろうか、彼女は口を開くと俺のモノを咥え込んでしまう。そして舌を絡めつつも頭を動かしだす。すごい。すごすぎる。先ほどの手コキもうまかったが、今度の口淫はそれよりもはるかにすごい。カリが唇の刺激を通り過ぎたかと思うと今度は舌が刺激してくる。こんなすごいのを眞一郎はしょっちゅう味わっているのか。徐々に限界が近づいてくる俺の竿。すると彼女の舌は今度はカリではなく先端へとターゲットを変えてくる。先っちょの割れ目を舌先でなぞり上げてきた。そのあまりの快感に俺は耐えることが出来なくなった。そしてついに爆発。勢い良く飛び出していく白液の脈動を彼女は口の中に受け止めていく。いや喉が動いているのが見える。それはつまり…まるで頭の中が真っ白になったようだ。放心状態の俺は今一考えが纏らない。俺は今何をしたんだ?どうすればいいんだ?すると湯浅さんは俺の陰茎から口を離すとゆっくりと立ち上がった。俺は呆然としながら彼女を見上げた。
「味がちらーう!!」
「へ?」
今の俺には彼女が何を言っているのか理解できない。
「何者らー!しょうらいをあらわせー!」
そういって歩み寄ろうと大股で足を踏み出す彼女だったが、あまりに力を入れすぎたのかちょうどそこにあった座布団に足を滑らせてすっころんでしまった。
「きゃ!」
そして動かなくなった彼女。俺はトランクスを上げると立ち上がって彼女を覗きこんだ。どうやら彼女はまた眠ってしまったようだ。すやすやと寝息をたてている。俺は深いため息をつくと財布を拾って逃げるようにその場を後にした。何もなかった。何もなかったんだと自分に言い聞かせながら。


(10)アセトアルデヒド分解の未完了

「ふぁーわぁ」
我ながら大げさな欠伸だと思いながらぼんやりとした目で辺りを見渡すとそこは見慣れぬ部屋だった。
眞一郎君と野伏君らしき話し声が襖越しに聞こえてくる。私は目をこすって意識を目覚めさせようと試みた。そう、ここは旅館の中だ。そして今は温泉旅行の最中。結局、昨日は愛ちゃんと野伏君は最後までたどり着けたのだろうか?あれ、そういえば昨日は夕食の後ってどうなったんだっけ?私は夕べのことを思い出そうとしてみる。だがその時頭をじわじわ締め付けてくるような痛みを感じた。
「いたたた」
「どうしたの?二日酔い?」
愛ちゃんがタオルを畳む手を止め尋ねてくる。気がつかなかったが愛ちゃんは私のすぐ近くにいたのだ。
「なんか頭が痛くて…」
「それが二日酔いなのよ。でも流石に薬はもって来てないからなあ。お酒飲むって知ってたら事前に用意しておいたのに…」
愛ちゃんは心配そうな顔で私を覗き込んでくる。私は心配しないでと愛ちゃんに返そうとするもまた頭に痛みを感じる。
「いたた」
私が頭を抱えるように抑えていると眞一郎君が襖越しに呼びかけてきた。
「比呂美?起きたのか?」
「頭痛い…」
「比呂美ちゃん二日酔いみたいよ。もうすぐ朝食だから、そしたら魚介類を優先的に食べればいいよ」
愛ちゃんは眞一郎への状況説明と共になにやらアドバイスらしきものを私に提示してくる。
「魚介類で治るのか?」
「うん、結構きくらしいよ?父さんはそう言ってた」
眞一郎君の確認に肯定を返す愛ちゃん。
「うん、わかった」
私は愛ちゃんの助言に従うことにする。
「無理はするなよ」
「大丈夫」
眞一郎君に心配ないと返しつつ布団を出て自分の鞄を開く。
「あれ?」
コンタクトレンズがケースの中に入ってない。ふいに私の脳裏に昨日の卓球の後の出来事が蘇る。ずれたコンタクトを直そうとして落としてしまい床を探る私に気づいた愛ちゃんが心配そうに近づいてきて…パリン。レンズは愛ちゃんのスリッパの下で昇天してしまったのだ。すっかり忘れていた。これもきっと二日酔いの頭痛のせいだろう。私は眼鏡のケースを開いて中身の存在を確かめる。こちらは大丈夫。安心すると私は眼鏡ケースをそのまま鞄の中に戻す。眼鏡を掛けた顔は眞一郎君にしか見せたくはないのだ。少し視界のピントが悪くなるがノートをとる訳でもないからかまわないだろう。
「ん?」
眼鏡をしまった私は何か引っかかりを覚える。だが何に対してなのかわからない。そんなふうに悩んでいる間に愛ちゃんは私の布団を畳んでいく。そして隣からまた眞一郎君の声が聞こえた。
「おーい、朝食来たぞ」
どうやら隣の部屋に4人分の朝食が届いたようだ。とりあえず考えるのは後にしてもいいだろう。今は先に朝食で魚介類を食べることが優先だ。頭痛であまり食欲はわかないのだが。

顔を洗い浴衣から私服に着替えて襖を開き朝食の席に着く。すでに他の皆は席について私を待っていたようだ。
「ごめんね。遅くなって」
「よし、じゃ食べようか」
「いただきます」
そして一同は一斉に箸を動かし始める。眞一郎君はガツガツと勢いよく朝食をかきこんでいく。男の子は食べる量が多いから私が残すことになったら眞一郎君に食べてもらおう。そう思いながら魚介類を口にする私。やはり余り食欲が湧かない。躊躇いながら箸を動かす私は同じように躊躇っている野伏君に気がつく。彼も二日酔いなのだろうか?あまり食が進んでいないようだ。昨日の昼にかなりの大食いをみせていた彼らしくない。私が見詰めているのに気がついたのか野伏君はは私から視線を逸らす。何か不自然だ。私はまた何か引っ掛かりを感じる。だがそれが何に対してなのかはやはりわからない。まあ考え事は頭痛が和らいでからにしてもいいだろう。私はまた箸を動かしだす。
「美味しいね」
「そうだな」
愛ちゃんの朝食に対する賛辞に同意を見せる眞一郎君。だが野伏君は相変わらず黙ったまま黙々と食事を続けている。
「比呂美もそう思うだろ?」
眞一郎君が私に同意を求めてくる。だが頭痛のせいだろうか余り美味しく感じられない。
「二日酔いのせいで味わっている余裕ない…」
「…そうか。残念だな。早く治るといいな」
眞一郎君は私を優しく見つめてくる。彼に心配かけないためにも早く治さないと。
「三代吉はどうだ?旨いか?」
野伏君は眞一郎君の急な振りにも気づかずに食事を続けている。
「三代吉?」
そして我に返ったのだろうか野伏君は慌てた様に返答する。
「あ、そ、そうだな。旨いよ。この旅館は一味違うって評判なんだよ。そうそう味がちがう…」
そこまで言って固まった野伏君。そして私を一瞬だけ見つめるとすぐに目を逸らした。どうしたのだろうか。何かあったのだろうか。
(味が違う?)
野伏君の言葉が私の頭の中でリフレインする。そして彼の挙動不審。何かが結びつきそうだ。私は昨日の出来事を思い出そうと試みる。夕食でお酒を飲んで酔っ払って…それからどうしたっけ?そうそう、そういえばいつの間にか眞一郎君と二人っきりになってて…口でしてあげて、でも味が違って…
「あああああ!!!!」
思わず立ち上がって大声で叫んでしまう。
「どうした比呂美?」
「気分悪いの?」
全てが一気に繋がってしまった。私はきっと眞一郎君と間違えて野伏君のモノを…野伏君は私から目を背けたまま。心なしか体が震えているようだ。間違いない。私は野伏君の放ったものを…
「うぇっ」
唐突に猛烈な吐き気をもよおした私は縁側の所にある洗面台へと駆け寄る。
「うげぇぇぇぇ」
そして食べたものを全て洗面台に戻してしまう。
「どうした!」
「比呂美ちゃん!」
洗面台に寄りかかってげほげほとむせる私に慌てて駆け寄ってくる二人。私は恐る恐る二人を見つめる。
「気分悪いのか?」
「お医者さん呼ぼうか?」
口々に私への心配を見せる眞一郎君と愛ちゃん。私はとんでもないことをしてしまった。これは眞一郎君への裏切りでもあり、愛ちゃんと野伏君に対しても裏切りだ。私は取り返しのつかない過ちを犯してしまったのだ。いつの間にか滲んでいた涙が頬を流れていく。
「比呂美…」
「うぁああああぁん」
私はついに抑えきれなくなって大声で泣き始めてしまう。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
眞一郎君は私の手を握り締めてきた。
「何があったんだ?」
「ごめんなさい眞一郎君。ごめんなさい愛ちゃん。ごめんなさい野伏君…私、なんてことを…」
私の涙は止め処なく溢れて来る。私は涙とともに贖罪の言葉を吐き出す事しか出来なかった。


(11)涙腺からの分泌液

大泣きしながらごめんなさいを繰り返すだけの比呂美ちゃん。何があったというのだろう?彼女のこんな姿は見たことがない。小学校5年の春、私より早く初潮を迎えた比呂美ちゃんが父親に特定の男子と私的に関わる事を禁じられたことについて相談しに私の元に来た時でも、泣きそうな顔をしてはいたものの結局最後まで泣くことはなかった。私はずっと彼女の涙を見たことが無かったのだ。初めて見る彼女の泣き顔に私は酷く戸惑ってしまっている。それに一向に説明がないので正直要領を得ない。そんな中、三代吉は躊躇いながら口を開いた。
「あ、あのさ…言い難いんだけど」
その後、三代吉が顔を背けながら続けた話を聞いて驚愕する私たち。彼が言うには酔っ払った比呂美ちゃんに眞一郎と勘違いされて口でされてしまったのだと。
「そ、そ、それってフェ、フェ…」
思わずどもってしまう。多分私の顔は真っ赤になっているだろう。私は慌てて眞一郎の顔を見つめる。彼は押し黙ったまま複雑な表情を見せていた。
「御免…俺がちゃんと拒絶出来てれば…」
顔を背けたままの三代吉の謝罪は皆に向かってのものだろう。私には容易に三代吉の苦い表情が想像できた。そんな中眞一郎は俯いていた比呂美ちゃんの顔を右手で持ち上げると顔を寄せて口付けをした。あれ?比呂美ちゃんは確かついさっき嘔吐を…そんなことを考えていると眞一郎は唇を離しじっと彼女を見つめると左手で涙を拭った。
「大丈夫。もう気にしてない。もう誰も気にしてないから。そうだろ?」
振り向きつつ私に同意を求めてくる眞一郎。一瞬の躊躇の後、私は慌ててそれを肯定する。
「そ、そうだよ。気にしてないよ。わ、私だって眞一郎のファーストキス奪っちゃったんだから、お互い様よ」
正直言うと気にしてないわけではない。キスとフェラチオでは全然違うと思うし。でも今は眞一郎に従うべきだと思ったのだ。
「三代吉はどうだ?」
眞一郎の質問に三代吉もようやく振り向きながら答える。
「いや、その、俺も気にしてないって言うか。正直気持ちよかったし…」
思わず三代吉を睨んでしまう私。三代吉はまた慌てて顔を背けた。
「ほら誰ももう気にしてないぞ」
眞一郎はもう一度比呂美ちゃんの涙を拭う。私たちと話している間にまた溢れていたのだ。そして彼女は眞一郎を上目遣いで見つめた。
「…ごめんね」
「もう謝らなくていいよ。間違いは誰にでもあるんだし。大切なのは同じ間違いを繰り返さないことだろ?」
「…うん、わかった。私、もう一生お酒飲まないわ」
そう言うと比呂美ちゃんは自分で涙を拭う。正直一生飲まないというのはオーバーだと思ったが、それくらい彼女は今回のことを後悔しているのだろう。眞一郎はそんな比呂美ちゃんの頭を嬉しそうに撫でるのだった。


(12)シュレディンガーの猫

旅館を出た俺たちはタクシーに乗って駅に向かった。助手席に座った俺は背後の眞一郎たちの姿をミラー越しに覗き見る。後部座席では湯浅さんを中央にして右に眞一郎、左に愛ちゃんが座っている。全員ずっと押し黙ったまま何も喋らない。何か思うところがあるのか、あるいは何を話していいのかわからなくなっているのか、いや多分両方なんだろう。よく見ると湯浅さんは眞一郎の腕を掴んで寄り添うようにして眠っているように見える。
「寝てるのか?」
「ああ」
俺の疑問に眞一郎が答えてくる。多分泣き疲れたんだろう。気のせいか湯浅さんの眼鏡越しに見える閉じた目から涙が滲んでいる様に見える。
「湯浅さんって眼鏡かけるんだな」
「ああ、知らなかったっけ?」
眞一郎は俺が知ってるものとばかり思っていたようだ。
「私も今回初めて知ったよ。目悪かったんだね」
そこまで言った愛ちゃんは何かに気づいたのか目を見開いて口を抑えた。
「あ!」
「どうした?」
「うん、そういえば昨日私比呂美ちゃんのコンタクトレンズ踏んで割っちゃったんだ…そのせいかも…」
愛ちゃんはしょげながら言葉を続ける。
「ごめん…」
「いや、愛ちゃんのせいじゃないよ。一番悪いのは比呂美なんだから」
眞一郎は意外な事に湯浅さんに非があるとしてきた。
「意外だな。さっきの口ぶりだと湯浅さんは悪くないと思ってるものとばかり…」
「初めての酒をあんな飲み方するほうが問題だろ?それにコンタクトが割れたって眼鏡があるんだから…」
「じゃあ、なんでさっきは比呂美ちゃんを擁護したの?」
愛ちゃんの質問を受けた眞一郎は湯浅さんの頭を撫でながら呟く。
「比呂美は頭がいいんだ。だから自分が一番悪いことはちゃんとわかっている。だから他人が責める必要なんか無いんだよ」
「でもそれでも一度はきちんと言うべきなんじゃ…」
眞一郎は愛ちゃんを見つめて穏やかに反論する。
「比呂美は弱いんだ。ちゃんと、ちゃんと誰かが守ってやらないといけないんだ」
「弱い…」
呆然としながら呟く愛ちゃん。眞一郎はまた湯浅さんを見つめて頭を撫で始めた。

そうこうするうちにタクシーは駅前へとたどり着いた。まだ列車の時間にはいくらか間がある。とはいえ列車の本数を考えるとタイミングが良いほうだろう。そんなことを考えつつ代金を払うために財布を出す。支払いを終えた俺はまだ後部座席にいる眞一郎と湯浅さんに気づく。何でまだ降りてないんだ?愛ちゃんはとっくに降りているのに。
「なにやってんだ?」
「ああ、比呂美を起こさないようにと思ってな」
俺の問いかけに答える眞一郎は湯浅さんに肩を貸しながらそっとタクシーの外に出る。俺も助手席を後にして眞一郎を手伝おうと近寄る。
「手伝うよ」
「いや、いいよ…いや、比呂美をおぶりたいからちょっと手を貸してくれ」
そして眞一郎は湯浅さんを一度俺に預けるとこちらに背を向けてしゃがみ込んだ。俺は湯浅さんに肩を貸すように支えつつ眞一郎の背中に負ぶさる様な位置に持っていく。愛ちゃんはなにも言わずに湯浅さんの手を眞一郎の肩の上に置きなおす。
「こんなもんかな」
「よし立つぞ」
そして眞一郎は彼女を背負ってゆっくりと立ち上がる。
「さ、行こうか」
そういって歩き出す眞一郎。
「…眞一郎君?」
眞一郎の背中ではっきりしない呟きが聞こえる。姿勢をいじられたせいだろう湯浅さんが目を覚ましたのだ。
「ここどこ?」
湯浅さんは眼鏡の隙間から指を入れ目をこすりつつ回りを確認している。
「駅だよ。まだ寝てていいんだぞ」
「うん、わかった…」
そういうとまた湯浅さんは目を閉じて寝息を立てはじめる。眞一郎はそんな彼女を優しく見つめるとまた歩き始めた。そして先を行く眞一郎を見守りながら愛ちゃんは呟いた。
「私、ずっと誤解してた」
「何を?」
俺は正面を見つめる愛ちゃんの横顔を見ながら尋ねる。
「比呂美ちゃんのこと。眞一郎のこと。ずっと比呂美ちゃんは強くてしっかりした子だって思ってた。眞一郎が比呂美ちゃんを好きなのは強くてしっかりしてるからだって思ってた。でも違ってた。眞一郎が比呂美ちゃんを好きなのは本当は弱いから。私馬鹿だよね。何を見てたんだろう」
愛ちゃんは自分を嘲る様な笑みを浮かべた。
「私は眞一郎に見てもらえるような子になろうって、強くてしっかりした子になろう…少なくともそう見えるような子になろうって…馬鹿だよね本当…過去を変えることは出来ないけど、もしちゃんと弱さを見せていたら眞一郎は私のものになってたかも知れないんだ…」
俺は思わず愛ちゃんの手を握り締める。
「俺は!俺なら!愛ちゃんをずっと!愛ちゃんだけを見つめていられる!ありのままの愛ちゃんを!」
そして俺は愛ちゃんの目に涙が滲んでいるのに気づく。
「ありがとう。三代吉。ごめんね。もうちょっとだけ時間が掛かりそう…でも、ちゃんと吹っ切るから。いつかちゃんと三代吉だけを見てあげるから…」
そういって俯いた愛ちゃん。そして彼女の頬を涙が流れていく。俺は何か気のきいたことを言わなければと口を開こうとする。
「おーい、切符買ってくれよ。俺たちの分も」
絶妙のタイミングで掛かる眞一郎の声。すでに駅舎のまん前まで進んでいた眞一郎が俺たちのほうに振り返って叫んだのだ。愛ちゃんは涙を拭うと俺に向かって微笑む。
「さ、行こう。大事な友達が待ってる」
何も言い返せない俺の手を掴んだ愛ちゃんはそのまま小走りに走り出した。
「ほら、早く」
「わかったから、そう急かすなよ」
そして俺たちは笑いながら駅舎へと進んでいく。そう、あせる必要はないんだ。俺たちは眞一郎たちとは違う。自分たちのペースでゆっくり進めばいいんだから。俺たちの乗る鈍行列車の出発はもうちょっと先なのだから。




###########

あとがき:

なんか比呂美寝てばっかりだな。という訳で実時間から約1年遅れの二次創作の新作です。今回は章ごとに一人称視点キャラが切り替わる“聖エルザクルセイダース”方式でお送りしたわけですが(たとえが古い)誰の視点かすぐわかるよねえ?厳密には3月中旬の話も今回同様聖エルザ方式だったんだけどあれは短い話だったし時間の流れも単純だからそう混乱はしないと思う。だが今回は長い話だ。予測はしてたが本当に長い。それにテーマ的には愛子がメインなのに描写自体は比呂美が中心になるというイレギュラーな話だ。個人的にはあまり失敗せずにですんだような気がするのだが…あ、電車内での食事のシーンは失敗ですね。本来は比呂美のお弁当だけの予定だったのに駅弁食べさしたほうがよくないか等と迷いが生まれてしまい、でも比呂美寝不足を説明する要素は必要だ。でないとあの台詞が出せない。等と迷走したあげくに駅弁とお弁当の両方を食べさせるという展開に。正直テーマともかみ合ってない駄目シーンになりましたとさ。…駄目じゃん俺。でも卓球シーンは予定外だったけど失敗にはなってないと思う。描写の下手糞さとかは失敗以前の問題だから関係ないしね!…いや、俺ももうちょっと文章がちゃんと書けるようになりたいとは思うんだけど。ま、あせっても無能はどうにもならないんで自分のペースでやっていきましょうと自己弁護。俺の乗るトロッコの速度は誰よりも遅いのだから。
スポンサーサイト

Comment form

管理者にだけメッセージを送る

Comment

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2Ad

Powered by FC2 Blog

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。