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2009-03-15(Sun)

二年次04月中旬:「花見と誕生日」

true tears 二次創作小説です。本編全話視聴終了済みの方のみご覧ください。



二年次04月中旬:「花見と誕生日」








「ようやく桜も満開だね」
校庭の桜の木を見ながら朋与は呟く。彼女の言うとおり今年の桜はちょっといつもより遅めだった。比呂美は桜の木を見つめて頷く。
「ね、花見とかしない?日曜辺りにさ」
朋与の提案に比呂美は眉を顰める。
「未成年が?お酒も飲めないのに?」
「別にいいじゃん。皆で騒ぎたいだけよ」
比呂美の反論に朋与は口を尖らせる。正直比呂美にはわからなかった。花見という文化は。ただ大人が酒を飲む為に出しにしているだけで桜の必要性などありはしないだろう。
「まあでも花見だけじゃイベントしてはちょっと物足りないか…」
朋与は鞄を持ったまま頭の後ろで手を組んだ。
「なんか他にもイベントないかな…」
「イベントねえ…もうすぐ眞一郎君が誕生日だけど…平日だしね」
「それよ!別に何日かずらして祝ったっていいじゃん!花見と一緒にやろう!!」
「ええ!!?」
という訳で、特に変哲もないバスケ部の練習が終わった直後の帰り道に、お花見兼仲上眞一郎の17回目のバースディパーティの開催が唐突に決定してしまった。これが吉と出るか凶と出るかはまだ誰にもわからなかったという。

比呂美と眞一郎が手荷物を持ってしだれ桜の元にやってくると既に多数の花見客が集まっていた。その中には見知った人たちの集団がいる。今回の参加者たちだ。彼らはスナック菓子をついばみながらわいわいと騒いでいる。だが人数が比呂美たちの予想よりも多い。普段余り話さないような人も結構見かけるのだ。
「なんか多くない?」
「そうだな」
疑問を感じている二人に朋与が気づき声を掛けてくる。
「お、来たね。お二人さん」
「こんなに集めたの?」
比呂美の疑問に朋与は集まった人員を見渡す。
「うん、多いほうがいいかなって思って…冷やかし上等、惚気話を聞くチャンスとか言ったら、以外に集まったの」
よく見ると美紀子は真由の物らしき携帯ゲーム機を手に持ったまま桜の木にもたれて居眠りをしている。真由もまた漫画本を枕にして眠っていた。
「要するにかなり早朝から場所取りをしていた訳だ」
「うん、あさみやあたしも入れた四人で交代しながらね」
辺りには別件のお花見の客が沢山いる。そして自分たちがいる所はしだれ桜に割りに近く、早朝でも中々取れそうにない場所だった。中々幸先が良いな等と比呂美は思った。
「さ、主役もそろった事だし始めようか」
同意した比呂美と眞一郎は靴をぬぎレジャーシートの開いている場所に座る。あさみは美紀子や真由の起こす。二人が大きなあくびをするのを確認すると朋与は立ち上がった。
「えーっ、主役も来たようですし、乾杯の合図に入りたいと…」
参加者たちは話を中断し朋与に注目すると、まずあさみがジュースの蓋をあけ紙コップに注ぎ始める。
「皆も適当についじゃって」
そして他の人たちも近くのジュースの蓋を開いたり、紙コップを差し出したりする。そうして全員が紙コップを手にしたのを確認すると朋与がまた口を開いた。
「で、それではお花見そして数日後の23日に17歳となる仲上眞一郎氏の誕生会を開催したいと思います。それでは仲上君のこの一年が幸福でありますように、そして皆のこの一年が彼に負けないくらいに幸福であたしにも彼氏とかできる事を願って…乾杯!!」
「乾杯!」
朋与の自分勝手な言い草にちょっとウケながらそれぞれがコップに口をつける。そしてまた喧騒が広がっていくのだった。

「足りないわよねえ」
そう言って比呂美は手荷物から取り出したタッパーの蓋を開く。中身はロールケーキだ。そしてロールケーキをタッパーの蓋に移し果物ナイフで切り分けていく。
「幾つ位にすればいいのかしら」
「ケーキか…一人で作ったのよね?」
「うん、今回は私一人でね」
「じゃあさ、それはプレゼントと交換って事にしよう。さすがに全員に渡そうとすると一人分が小さすぎるし、大体ここにいる全員がプレゼントを用意しているわけでもないだろうし」
「なるほど…」
比呂美は朋与の発案に同意する事にするとまた手荷物を漁り始めた。
「じゃあ、クッキーはどう?これなら全員に行き渡るだけあるわ」
比呂美はまた別のタッパーを開き、中のクッキーを隣にいる眞一郎の口元へと運ぶ。眞一郎はクッキーを咥えると口の中に丸々吸い込んだ。
「うん、美味いよ。流石は比呂美だな」
クッキーの甘みを噛み締めている眞一郎の笑顔を確認すると比呂美はレジャーシートの中央へと運ぶ。
「良かったら皆も食べてね」
そして美紀子やあさみたちはクッキーを拾い上げると周りの人に渡し始めた。そして比呂美はまたもや手荷物からタッパーを取り出す。
「はい、眞一郎君」
比呂美が取り出したのは炊き込みご飯のおにぎりだ。眞一郎は礼を言うとおにぎりにかぶりついた。
「なにそれ?何が混ぜてあるの?」
「タケノコ」
朋与の疑問に比呂美が簡潔に答える。
「筍って…ひょっとして西田(さいだ)?」
「ううん、近所の竹林の」
朋与がだした地名はこの辺の筍産地としては有名なものだった。
「西田だったら生で刺身にしても食べられるって話よね」
美紀子の言葉に同意する比呂美。
「朝掘りなら出来るみたいね」
「へえーっ食べてみたいなあ」
露骨な食い気を見せる朋与に比呂美は苦笑しながらちょっと自慢してみる。
「私食べたことあるわ西田の筍のお刺身」
「ええ!?」
「うん、仲上家にいるときにね。日曜の早朝に来客があって、その人が持って来たらしいの」
「うーん、流石に地元の有力者…我々とは色々違うようですな」
「たしかにね。普段は一般家庭と同じなのに稀に高級食材とか食卓に出てくるし」
そんな比呂美と朋与の会話に美紀子が割り込んでくる。
「勝手に取っていいの?他人の土地なら…」
「うん、事前に調べてみたけどあの辺は国有地で私有地じゃないみたい」
美紀子の疑念を比呂美はすぐさま否定した。
「なるほど」
「国有地で良かったわ。あそこ以外の筍じゃ何の意味もないから」
「思い出の場所か…ご馳走様」
「何々?聞きたいな」
比呂美たちの会話を聞いていたのか真由が身を乗り出してきた。
「そ、それよりもさ…プレゼントだけど」
「うん、そうだね。早めにやっておこうか。じゃあ皆…」
比呂美が言いかけた言葉を最後まで聞かないうちに朋与は立ち上がった。だがそんな朋与を比呂美は制止する。
「ちょっと待って!」
「何?」
疑念を見せる朋与。比呂美は立ち上がると咳払いをして大き目の声を出した。
「えーっ、これから眞一郎君へのプレゼントを出してもらうのですが。女子のプレゼントは全部私が中を確認させてもらいます」
比呂美の言葉に眞一郎は飲みかけていたジュースを噴き出す。周りの人たちもまた呆然としていた。
「それはちょっと…」
朋与の言葉に比呂美は首を傾げる。
「どうして?人の男に色目を使うのと同義のプレゼントは恋人としては受け取り拒否したいんだけど。それとも何?実際に色目を使ってるわけ?」
朋与は困ったような顔で眞一郎を見た。眞一郎は少し困惑した顔を見せながらも同意を示す。
「比呂美がそうしたいなら…俺はかまわないけど」
「うーん、反論のある人いる?」
朋与の言葉に美紀子が手を上げる。
「別に検閲とか構わないけどさ、女子に対してやるなら男子にもやるべきね。なんか不公平」
「そうね、じゃあ男子のも検閲しましょう」
美紀子の言葉に同意を見せる比呂美。そうして一同は渋々ながら鞄などを開き始めた。

「じゃあ、最初は…あさみから」
「ええ!?あたし?なんで?」
理解不能と言った顔を見せるあさみだったが、周りにいる人間は皆同じ考えに至ったと言う。ようするに彼女が色目を使う一番の容疑者なのだと。
「しかたないな」
そういいながらあさみは変な形につつまれたプレゼントを比呂美に手渡した。比呂美は無言でラッピングを解いていく。
「はねぼうき…」
そう呟いた比呂美をあさみは緊張の面持ちで見つめる。比呂美はあさみを鋭い目で睨み付けると目を閉じてまた呟いた。
「オーケイ。これなら…むかつくけど」
(むかつくんだ!)
あさみの心の叫びが届いたのかは不明だ。比呂美は手にしたはねぼうきを眞一郎へと渡す。眞一郎はあさみにお礼の言葉を掛けた。
「じゃあ、次は愛ちゃん…っていないのか」
周りを見渡す比呂美に三代吉が手を上げて答える。
「愛ちゃんはお店を閉めるわけにはいかないって…プレゼントは俺が預かっているよ」
「じゃあ二人分まとめて見せてもらうわ」
そして彼は二つの包みを比呂美に重ねて渡した。比呂美はまず小さい包みを解いていく。
「トランプ…」
少し考え事をしているような比呂美に三代吉は尋ねる。
「何か意味があるのか?」
「謝罪…かな?うん、これは大丈夫ね」
そう言うと比呂美はトランプを眞一郎に手渡す。そして今度は大き目の包みを開く。
「スキン?しかもグロス…」
比呂美の言葉に周りの緊張の空気が流れる。皆が皆、これは駄目だろうと思っていると比呂美はにこやかな顔で三代吉を見る。
「ありがとう…日用的な消耗品はいくらあっても困らないわ」
(日用的な消耗品なんだ!)
心の中での叫ぶ一同。比呂美はそんな空気を全く意に介さず、赤くなって顔を下げている眞一郎へとブツを手渡した。
「それじゃ後は真由から時計回りで行こうか」
そして真由はコンビニだかのビニール袋からプレゼントを取り出した。それはペンギンのぬいぐるみだった。
「クレーンゲームで取ったやつでラッピングとかもしてないけど…どうかな?」
恐る恐る比呂美の顔を見る真由。だが比呂美はにこやかに微笑みつつも冷たい言葉を放つ。
「駄目。NG」
「えぇっ!?どうして?」
「ぬいぐるみっていうのはいわば分身みたいなものよ。あなたの傍にいたいって言う意味だわ」
比呂美の説明に朋与は少し首を傾げる。
「考えすぎじゃないのかなあ」
「とにかく駄目なものは駄目」
「じゃあ、どうしよう。これ。うちはもうぬいぐるみだらけなんだよね」
比呂美に却下されたプレゼントを見つめて悩む真由。
「ほんじゃ、あたしが貰う」
あさみの立候補でその場は収まり、次は美紀子の番だ。美紀子から受け取った小さな包みを解いていく比呂美。
「ハンカチ…これも駄目ね」
「え?駄目なの?」
「身に着けるものは基本的に皆駄目ね。触れ合っていたいって言う意思表示ね」
「やっぱ考えすぎとしか…」
「じゃ、次の人は手を上げて…」
比呂美は美紀子の隣で手を上げた見慣れぬ男子を見つめた後、眞一郎に尋ねた。
「誰?」
「…誰だろ?」
眞一郎の答えに男子は立ち上がって叫ぶ。
「何言ってんだよ!小学2年とかで同じクラスだっただろ!堂木だよ堂木雄政(どうきゆうせい)だよ!大体、湯浅とは今年は同じクラスだろ!」
堂木は一通り叫ぶと座りなおしながら呟く。
「忘れるなよな仲上。小2の夏くらいまでは一緒に遊んでただろ」
「そういえば…悪い。忘れてた」
頭を下げている眞一郎に比呂美は質問をする。
「なんで遊ばなくなったの?」
比呂美の質問に眞一郎と堂木は一瞬言葉を詰まらせる。だが堂木は比呂美に向かって捲し立てた。
「お前だよ!お前、お前らが付き合い始めたから、こいつは俺らとつるまなくなったんだよ!」
堂木は眞一郎を指差している。朋与は怪訝な表情を浮かべた。
「あんたら小学生で付き合っていたの?」
「いや、そういう訳じゃ…」
「一緒に遊んだりはしてたけど…」
眞一郎と比呂美は交際の事実を否定した。。
「は、男と女が二人きりで遊んでたら交際だろ」
「いや、愛ちゃんも一緒の事多かったから。今川焼き屋の子」
眞一郎は事実を追加し堂木の見解を覆そうとする。
「似たようなものだろ。まあしかしオニイワの娘に手を出すとは勇気あるなって当時仲間内で話してたよ」
「オニイワ?」
朋与の疑問に堂木が答える。
「湯浅の父親さ」
「ああ、小学校の教師だって言ってたっけ」
朋与は比呂美から父親について少しは知っているような口ぶりを見せる。
「担任だったとか?」
「いや、俺らのいっこ上の学年の担任。でもその評判は学校中に響いてたな」
美紀子の質問にまた堂木が答える。
「そんなに厳しいんだ」
美紀子の感想に眞一郎や比呂美、そして堂木は深く頷いた。さらに参加者のうち何人かも頷いている。
「そういや5年生になってからお前ら一緒のとこ見なくなったけど…オニイワが原因なのか?」
ふいに堂木が出した質問に比呂美は遠い目をしながら答えた。
「うん、特定の男子一人と遊んだりするのはもう駄目だって…高校卒業まで禁止だって言われて…」
「え?そうだったんだ…」
眞一郎は呆けた様に比呂美を見つめる。
「あれ?知らなかった?」
「いや、初耳だよ。何か嫌われるようなことしちゃったのかと思ってた」
「愛ちゃんから何も聞いてない?」
「いや?」
「…やっぱり豆狸ね…」
比呂美は何か考え込んだような顔を見せて呟いた。
「しかし中学の頃に告白を断るのに使ってた言い訳…あれ本当だったのね」
「その後は居候の身でとても男女交際としかている余裕はないっていう言い訳に変わったのよね」
朋与と美紀子が出した事例はすでに過去のものである事を念のために比呂美は告げる。
「でもまあもう言い訳とかもしなくても良くなったからね。売約済みだし」
彼女たちの話も一段落したようなので堂木は気を取り直して手荷物を漁りだした。
「じゃ、そろそろ俺のプレゼントも見てくれよ」
「あ、ごめん。忘れかけてたわ」
比呂美は堂木が差し出した物を受け取る。
「キューブパズル?」
「あれ?何か思い出しそうな…」
眞一郎の脳裏に何かが浮かびそうになる。堂木はその何かをはっきりと告げる事にした。
「お前らが仲良くなった後の事だよ。俺が親父の部屋で見つけたパズルをこっそり学校に持って行ったとき、お前触りたがったよな。でも俺は貸してやらなかった。俺らより女を選んだお前を毛嫌いしてたんだ。ガキだったよな。本当。今ならわかるよ。男友達よりも女のほうが大切だって。悪かったな。仲上」
眞一郎は比呂美からキューブパズルを受け取りながら答える。
「ありがとうな。そういえば5年生の頃ちょっと人間不信っぽくなってたな。比呂美には嫌われるし、昔の友達も冷たくなってるし」
「そうだったんだ…ちゃんと自分から言えば良かった」
そういえば昔は眞一郎にも友達は沢山いたような気がするなと比呂美は思い出す。どうやら今の眞一郎に友達が少ない原因の一端は自分にあるようだと比呂美は感じた。
「うん、これは当然Okね」
そして残りの人たちのプレゼントの閲覧に入る。その後、おおよそ終わったと思われる時点で駄目出しに追加されたものはマグカップだけだった。それ以外はすべてセーフとなっている。そして最後となる朋与が文鎮を出してきた。
「文鎮って…」
「え。記念品って言ったら文鎮でしょ?」
「なんだかなあ」
当然これも大丈夫で、プレゼント検閲は終了した。ちなみにプレゼントを用意して来た人は6割位で、比呂美のロールケーキは検閲に通った人しか食べれなかった。ケーキの分量が少なかったせいで眞一郎もこの日は比呂美のケーキにありつけなかった。まあ、これは誕生日の当日にはもっとちゃんとしたケーキが食べられるのだから今日は別にいいだろうと眞一郎自身が辞退したの為なのだが。

「で、あんたのプレゼントは?」
朋与の言葉に目を丸くする比呂美。
「そうよね。他人のプレゼントを見てとかするんだから、私たちも見たいわよね」
口を挟んでくる美紀子に暫く考え込んだ比呂美だったがやがて立ち上がって答えた。
「いいわ、持ってくるから」
そういうと比呂美は一旦花見の会場を離れる事にした。

「ふーっすっきりした」
「長かったな。どこまで行ってきた?」
靴を脱いでレジャーシートに座り込んだ眞一郎に三代吉が尋ねる。
「学校の近くの公園。この辺で他にトイレあったか?」
「いや、どうだろ」
首を振る三代吉。眞一郎は辺りを見渡す。だが無駄話に興じる人だかりの中に彼女の姿を見出すことは出来なかった。
「比呂美はまだ戻ってないのか?」
「そういや、遅いわね」
そういうと朋与は携帯を取り出す。比呂美を指定して発信をかけると微かに着信音が聞こえた。
「あれ?近く?」
朋与が立ち上がって音の出所を探すと、曲がり角から比呂美が姿を現した。
「あれ?」
朋与が驚いたのも無理はない。比呂美は銀色の自転車に乗っていたのだ。やがて比呂美は皆の傍まで来ると自転車を止めて降りる。朋与は靴を履きレジャーシートから外に出る。周りの人たちも会話をとぎらせて比呂美と自転車を見つめた。
「どうしたの?それ?」
朋与は比呂美の持ってきた自転車をまじまじと見る。普通の自転車とは違いサドルのついた縦に伸びるフレームのすぐ後ろに何かが付いている。
「何これ?」
「バッテリーよ」
朋与の疑問に比呂美がすぐさま答える。どうやら電動アシスト付の自転車のようだ。
「眞一郎君、来て」
そして比呂美は眞一郎を呼び出す。靴を履き比呂美の下に向かう眞一郎。
「ひょっとして…」
「そう、これが私からのプレゼント」
「ええっ!!!」
比呂美の言葉に驚く一同。無理もない。高校生の誕生日プレゼントとしては正直高額すぎるものだ。
「それって流石に高すぎない?」
朋与の言葉に比呂美は左手の指輪を見ながら呟いた。
「そう?まあ、ちょっと高めかとは思ったけど」
(麻痺してる…)
その場にいるもの全てがまた同じ考えに至った。下手に貴金属を貰ったから金銭感覚がおかしくなっているのだと。
「自転車ならちょっと遠目の場所まで気軽に出かけられるでしょ?」
比呂美はそんな空気を読まずに眞一郎に語りかける。確かに電車は一時間に一本が当たり前の田舎においては自転車は有効な交通手段と言えるだろう。眞一郎にも比呂美の意見は一応理解出来る。
「でもそれなら電動みたいな高価なものじゃなくて安い自転車二台買ったほうが…」
「何言ってるの?二人乗りの方がいいじゃない」
眞一郎の出した代案は即刻比呂美に却下された。
「さ、乗ってみて」
比呂美の言葉に頷いた眞一郎は早速自転車に跨る。
「椅子の高さもちょうどいいな」
「さっき合わせておいたの」
眞一郎は比呂美から電源スイッチ等の説明を受けると試しに漕いでみた。
「おお、軽く漕ぐだけで進むぞ」
ちょっと感動する眞一郎に比呂美が甘い声を出した。
「じゃあ、今度は私を後ろに乗せて♪」
「おお」
眞一郎が一旦自転車を止めると比呂美が荷台に女座りで腰掛ける。既に荷台には座布団が括り付けてあった。
「よし、ちゃんとつかまってろよ」
「うん」
そういうと比呂美はぎゅっと眞一郎を抱きしめた。眞一郎の背中に比呂美の柔らかな膨らみが当たる。それは交際開始から大きな成長を遂げつつあるモノだった。
「ちょ、比呂美、胸がさ…」
「何恥ずかしがってるのよ。彼氏の背中に胸を押し付けるのが恋人同士の二人乗りの醍醐味でしょう?」
困惑する眞一郎。何かが間違っていると比呂美を除く全員が感じた。
「大体お前、下着はどうしたんだ」
「うん、ブラは外して来た」
比呂美の言葉にどよめきが走る。
「…いやはや比呂美さんにはもうお手上げですな」
「本当に…」
朋与の溜息に美紀子が同意する。そして朋与はふと沸いた疑問を口にしてみる。
「ところでさ、4番の後ろでもそんなことやってたわけ?」
比呂美は気分を害したように答える。
「やめてよ。なんで私が…あんなキザシスコンに」
「キザシスコンって…」
「シスコンだったんだ…」
朋与たちは暴かれた石動純の真の姿に驚きの色を隠せない。比呂美のブラなし発言を受けた眞一郎はまず比呂美のアパートまで行ってちゃんとブラをつけさせる事にした。そして胸の感触に感じながらの二人乗りが始まる。

その後、眞一郎と比呂美が二人乗りで花見場所まで戻ってくると同時に希望者による電動アシスト自転車の試乗会が始まった。乗った人は口々に軽く漕ぐだけで進むのに驚いた事を繰り返すのだった。

花見兼誕生会の開始から既に2時間は優にたっただろう。何がきっかけだったのか参加者たちは歌合戦を始めていた。少し疲れたのだろうか、眞一郎はそれを見ながらうとうとと船を漕ぎ出している。比呂美はそんな眞一郎に気づくと自分の腿を叩く。
「いいよ」
眞一郎は頷くと比呂美の膝枕に頭を預け、そのまま眠ってしまった。比呂美はそんな眞一郎を幸せそうに見つめる。すると舞い降りてきた桜の花が比呂美が手に持っている紙コップに入った。比呂美は桜の木を見上げる。柔らかな風が流れ桜の花びらが幾つか宙を舞っていた。
舞い踊る桜をじっと見つめ続けた比呂美はお花見というのもいいかもしれないと思い始めるのだった。

そして菓子や食べ物、飲み物も無くなってきた頃、朋与がちょっと疲れ気味の顔を見せながら口を開いた。
「じゃあ、そろそろお開きにしようか」
朋与の言葉に納得した者もしない者も両方いたようだが、騒ぎ足りない人は別件で騒げば良いだけの事。皆は帰り支度を始める。比呂美も眞一郎を揺り起こした。
「眞一郎君、起きて」
眞一郎は目をこすると背伸びと大きなあくびを見せた。
「うん?もう終わりか?」
「うん、私たちも荷物片付けよう」
比呂美の言葉に眞一郎はプレゼントをかき集めだす。その時眞一郎はまだ開いていないプレゼントがあるのに気づいた。
「あれ?」
眞一郎が小さなプレゼントの包みを開いているのを訝しげな顔で見つめる比呂美。彼女にも何故未開封の物が残っているのか理解できないようだ。眞一郎が包みを開くとそれは小さな赤い木の実がなっている木の小枝だった。だが木の実は既に干乾びていて一部変色している。
「グミ?秋グミよね。それってさ…」
比呂美の言葉も終わらないうちに眞一郎は木の実を口の中に放り込んだ。
「ちょ、眞一郎君?」
眞一郎は比呂美を見つめるとしかめっ面を見せた。
「不味い」
比呂美はそんな眞一郎を黙って見つめる。心なしか眞一郎はしかめっ面をしながら笑っているようだと比呂美は思った。
「全く…あの鳥電波め。いつの間に…」
だがそんな言葉とは裏腹に比呂美もまた笑顔を見せていた。柔らかな日差しと暖かな風。そして桜の花びらの舞う…そんな春の日の出来事。

ちなみにシーズンを大幅に過ぎた秋グミの実を食べた眞一郎はその後、ひどい下痢に苛まれたと言う。
比呂美「めでたしめでたし♪」
眞一郎「め、めでたくなんかないぞ!!ううう…」





###########

あとがき:

自転車の二人乗りは法律で禁止された行為です。絶対に真似をしないでください。よしこれで大丈夫。俺に責任は降りかからないぞ。

今回の比呂美の検閲は書いた俺自身が考えすぎだと思っている位です。実際に異性の友達にプレゼントを贈るときの参考にはなりません。念のため。

一応言っておきますが眞一郎の誕生日4月23日は当方が勝手に決めた事です。公式には誕生日の設定は明らかにされていません。後、比呂美の父親が教師というのも俺の脳内妄想です。でも酒蔵をやっていたというのよりは説得力があると思います。

脳内にある段階では5万円位の電動アシスト自転車を考えていましたが…書いている内に、電動って二人乗り出来るのか?という疑問が沸いてきたので調べようとしましたが、全然情報が出てこない。最終的には業務用の電動アシスト自転車にすれば二人乗りくらいは出来るだろうと思い込む事にしました。で、これです。

PAS GEAR | ヤマハ発動機製品サイト
http://www.yamaha-motor.jp/pas/lineup/pas-gear/index.html
YAMAHA/ヤマハ 電動アシスト自転車 PAS GEAR 26型 (PV26B) 【20 サイクルショップ ライフ - Yahoo!ショッピング
http://store.shopping.yahoo.co.jp/cycle-life/yh-0811pz26b.html

12万越えてます。指輪が15万くらいを想定しているのに…これはいくらなんでも高すぎですね。でも他に選択肢はなさそうです。仕方ありません。あ、比呂美には親の残した遺産が殆ど手付かずで残っているので特別な場合に対する出費はそこから出しているというつもりです。基本的な生活費は仲上家持ちで。まあアパートの家具とかそろえるのに貯金が全くないなんて事はない筈だしね。

あと高岡市西田地区の筍を使ったお刺身ですが、一般家庭が食べる事がどれくらいあるのか不明です。とりあえず殆ど食べる事はないと考えました。そもそも値段の相場ってネットで調べられないんだよな。

基本的に筍は時間と共にえぐみが増える物で、日の出前に地面に殆ど埋まっている筍を掘り出しすぐに食べるなら刺身に出来るらしいです。さらに竹林の土壌等によって筍本来のえぐみの度合いが違うと言うので、土壌が粘土質の西田の筍はそのえぐみが少ない物って事らしい。ちなみに思い出の竹林の土壌は赤土のつもり…もし粘土質の証拠とかあっても気にしないように。
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