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2009-01-04(Sun)

一年次02月中旬:「思い出とヴァレンタイン」

true tears 二次創作小説です。本編全話視聴終了済みの方のみご覧ください。



一年次02月中旬:「思い出とヴァレンタイン」








「もうすぐあれだね」
おさげの少女がバスケ部のユニホームを脱ぎながら呟いた。
「あれって?」
長身で色黒の少女がスカートを着ながら尋ねる。
「バレンタインに決まってるでしょ」
そう答えたのは外はね髪の少女だ。彼女はもう着替え終わって鏡で髪型をチェックしている。
「で、誰にあげるの?」
三つ編みにしたの少女の質問を皮切りに更衣室が喧騒に溢れていく。
「お父さんと弟くらいかな」
「えーっ。嘘でしょ」
「あたしは従姉弟かなぁ。あげるなら。小学生だけど」
「みんな義理ばっかり?あたしだけ?本命いるの」
「えぇ!本命いるんだ」
「誰?誰?教えて!」
「えーっ、秘密だよーっ」
そんな黄色い声の会話に交わらずに端っこでスポーツドリンクを飲んでいる少女に別の少女がヘアバンドを外しながら話しかける。
「比呂美さんも今年は本命チョコですかな」
「ご想像にお任せします」
比呂美はすました顔で答えた。
「大体朋与こそ、いい加減チョコあげたい人が出来てもいいと思うんだけど」
「あっちゃーっ、痛いところを突かれた」
比呂美の反撃を軽口でかわす朋与。そして二人は笑いあう。

「それじゃさよなら」
「また明日」
「ん。さいなら」
女子バスケ部員はそれぞれに校門を出て岐路についていく。朋与もまた同様に岐路につこうと挨拶を切り出そうとした。
「ではまたミョウニチ…」
「あ、待って」
朋与を引き止めたのは比呂美だった。
「うん?何」
「ちょっとね。相談したいことがあって…あ、時間ないなら歩きながらでもいいよ」
比呂美の言葉を目を閉じてじっくり噛みしめる朋与。
「あの?どうしたの?トヨモ」
「いやなに。比呂美さんからそんな台詞を聞く日が来るとは。いやはや長生きはするもんだ」
「あんた年幾つよ」
思わずジト目で睨んでしまう比呂美だった。

時計の長針が真上へと動く。そして目覚まし時計がけたたましい音を鳴らそうという瞬間、一本の腕が時計へと伸びてくる。そしてほんの一瞬のアラーム音しか目覚まし時計は鳴らすことが出来なかった。時計へと腕を伸ばしたまま時間を確認した眞一郎はベッドの上に立ち上がった。
「よし!!」
そして壁のカレンダーの14日の所につけた赤丸を確認すると胸を張って叫んだ。
「記念すべき勝利の日だ!!」

三代吉が下駄箱で靴を履き替えていると後ろから声を掛けられる。
「おはよう!野伏くん。今日もいい天気だね!」
驚いた三代吉が振り返ると声の主は眞一郎だった。
「どーしたんだ。お前」
「何言ってるんだい。いつもどおりだよ僕は」
しばらく怪訝な顔を見せいてた三代吉はふとあることに気が付いた。
「ははーん。そうか今日はバレンタインだもんな。浮かれまくってるわけだ」
「そ、そんなことないよ野伏君」
「ま、しゃーないか。俺も以前は結構期待してたもんな」
「あ。ご、ごめん」
眞一郎の脳裏に愛子の顔がよぎる。
「お前が謝ることじゃねーよ。まあ本命は無理かも知れんが義理は確定だし去年よかマシだよ」
「三代吉…」
「まあお前は本命確定だからな。羨ましいぜ。どんなチョコもらったか後で教えろよ」
三代吉はそういうとさっさと教室に向かう。眞一郎も三代吉を追いかけるように教室へ急いだ。

眞一郎が教室に入るなり辺りを見回すが比呂美の姿は無かった。仕方なく椅子に座るもそわそわして落ち着かない。するとそこに比呂美の声が聞こえた。
「おはよう」
「おはよ」
「おはよう」
女生徒達の挨拶の最中、眞一郎が比呂美のほうを見つめると比呂美は微笑みながら挨拶をしてくる・
「おはよう眞一郎君」
「お、おはよう」
このタイミングでチョコかなと期待する眞一郎。だが比呂美は挨拶だけするとさっさと席に座って朋与達と会話を始めてしまう。
(ま、まあクラスメイトの目の前じゃ渡しにくいよな…)
眞一郎は取りあえず機会を待つことにした。

一時間目が終わり休み時間が始まった瞬間、黒板の前で真由と美紀子が声を張り上げた。
「はーい。1B男子注目!!!今からあたしと美紀子の二人からもてない男子への救済処置としてロチルチョコの配給を行いまーす。欲しい人は二列に並んでくださーい」
「おお、こんな所で義理チョコが!早く並ぼうぜ」
三代吉に引っ張られた眞一郎は戸惑いながらも列に並ぶ。
「はいロチルチョコ」
順調にクラスの男子にチョコを渡していく二人。眞一郎の前に並んでいた三代吉も自分の番が来てチョコが貰えると嬉しそうに叫んだ。
「やったぜ!初チョコだ!」
「ロチルチョコ1個でそこまで喜ぶかな…」
呟きながら真由の前に立った眞一郎。だが真由は困ったような表情のまま動かない。じれて片手を差し出す眞一郎。真由はチラリと美紀子を見る。美紀子は首を振って答えを返した。真由は両手を合わせて眞一郎に謝罪を始める。
「ごめんねーっ。仲上くんにはあげられないの」
「え?なんで」
「だって比呂美に知られたら殺されかねないもの」
「ええーっ」
驚いた眞一郎は教室を見渡す。だが比呂美の姿は見当たらなかった。
「比呂美ならトイレだよ」
眞一郎の意を察したのか朋与が答える。困惑する眞一郎を尻目にチョコの配給は続き、男子に一通り行き渡ったようだ。
「少し余ったね。1Aの男子にも先着順であげようか」
「そうだね」
美紀子と真由がそんな会話をしていると教室に比呂美が入ってきて眞一郎と目が合う。眞一郎が口を開きかけるとチャイムが鳴り古文担当の教師が教室に入ってくる。この教師はいつも来るのが早いのだが今日はさらに輪を掛けて早かった。バレンタインの邪魔がしたいんだろうかと眞一郎は疑いたくなった。

その後も体育や理科室への移動など休み時間の間に比呂美に話しかけるチャンスはなかった。そして昼休みになり眞一郎は比呂美の姿を探す。
「比呂美に用?なんか自主練習とか言ってたよ」
辺りを見回す眞一郎にあさみは親切心を見せた。
「ありがとう」
眞一郎が体育館に向かうと三代吉は椅子にもたれかかりながら呟く。
「あいつまだ貰ってないのか?」

体育館ではユニフォーム姿の比呂美がシュート練習をしていた。朋与が隅っこでそれを見ながら購買のパンをかじっている。眞一郎は思い切って比呂美に声を掛けた。
「比呂美!」
比呂美はシュート練習を止めて眞一郎を見つめる。
「何?急ぎの用?」
「いや、急ぎって訳でも…」
「じゃあ、後にしてちょっと昨日ノルマをこなせなかったから」
そういうと比呂美はまたシュート練習を再開する。何か言いたげにしていた眞一郎はやがてとぼとぼと戻っていった。そんな彼の後姿を朋与は紙パックのジュースをストローですすりながら黙って見つめていた。

結局、本日の授業とホームルームが終了し比呂美と朋与は話しながら教室を後にして下駄箱とは反対方向へと向かう。あちら側は女子更衣室の方向だから部活に行くんだなと眞一郎は思った。
「じゃ、俺は愛ちゃんのとこ行くけど、どうする」
そういって三代吉は眞一郎の首に腕を絡める。
「いや俺はいいよ」
「しかし湯浅もなんつーかさ。釣った魚には餌をやらないってゆうの?」
「まだ貰えないと決まったわけじゃない!」
思わず声を荒げる眞一郎。三代吉はにやけながら呟く。
「じゃ、あれだ。体中にチョコ塗って、あーたーしーをーたーべーてー♪」
「変な漫画読みすぎじゃないのか?」
眞一郎はそんなことはありえないと三代吉の言葉を否定する。
「ま、どんな結果になってもちゃんと教えろよな」
そういうと三代吉は教室を後にする。
「ギーリギーリ義理でもいいから、手作りがいいなー♪」
廊下から三代吉の調子外れの歌が聞こえる。眞一郎は三代吉の歌声を聞きながら去年のバレンタインを思い出していた。去年は確か朝食の時に義理ですけどと断ってから比呂美はまず眞一郎の父親に、それから眞一郎にチョコレートを渡してきた。チョコレートは菓子メーカーの市販品のものでやや高級志向のものという感じだった。そういえばホワイトデーのお返しとか忘れてたなと眞一郎は思い返す。ひょっとして3倍返しをしなかったから今年は無しだということだろうか。もやもやを抱えたまま眞一郎は教室で一人悶々と過ごすのだった。

しばらく気分を変えるためにスケッチブックに向かい絵を描いていた眞一郎。ふと時計を見るとそろそろ部活も終わった時間だった。
「そろそろ行くか」
眞一郎はスケッチブックをしまうと校門へと向かう。校門の外で待っていると部活の終わった生徒が下校が多くなってくる。やがて聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あはは、なにそれ、駄目じゃん」
声の主は黒部朋与だった。眞一郎は校門の影から顔を出す。
「あれ、どうしたの?」
朋与の質問には答えずに辺りを見渡す眞一郎。
「比呂美は?」
「ああ、奥さんなら先帰ったよ。練習の途中で」
「へ?」
呆然とする眞一郎。朋与はちょっと意地悪そうな顔を見せる。
「何か用事があるってさ…旦那をほっぽり出すような用事ってなんだろうね」
西の空を飛ぶカラスが眞一郎を馬鹿にしたような鳴き声をあげた。

眞一郎が自宅に戻るとちょうど父親が本宅から酒蔵に戻る途中だった。
「眞一郎か。ちょうどいい。後で比呂美に礼を言っておいてくれ」
父親はそういうと包装紙につつまれた小箱を眞一郎に見せる。
「チョコレート…一体いつ…」
「ああ、ちょっと前にな。母さんが預かったらしい」
父親の返答を聞きしばらく呆然としていた眞一郎。やがてすごい勢いで走り出した。
「なんで親父にはあげて俺にはないんだよ!おかしいだろ!」
眞一郎は叫びながら比呂美のアパートまでたどり着きそのドアを叩く。
「比呂美!いるのか!」
だが中からの返事は無い。眞一郎は合鍵を取り出し鍵を開け中に入るも、やはりそこには誰もいなかった。
「何だよ…」
眞一郎は灯りをつけるとまずテーブルの上と冷蔵庫の中を調べる。そして戸棚とかチョコレートを置きそうな場所を一通り確認する。だがどこにもチョコレートらしきものは存在しなかった。
「何でだよ…」
眞一郎はそう呟くと部屋の隅にうずくまった。

どれくらい経った時だろうか。鍵を開けようとする音が聞こえてきた。
「あれ、開いてる」
そういうと比呂美はドアを開け部屋に上がる。そして眞一郎の姿に気づくとため息をついた。
「来るなら連絡入れてよ。泥棒が入ったのかと思っちゃうじゃない」
眞一郎は座り込んだまま、顔を上げ比呂美を睨んだ。
「な、何よ」
戸惑う比呂美に眞一郎はゆっくりと呪詛の言葉を紡ぐ。
「チョコレート…なんで親父にはあげて…俺には無いんだよ…」
「へ?ああ、うん。そうか。そうよね。そう思えちゃうんだわ」
一人で勝手に納得する比呂美。眞一郎は立ち上って比呂美を見つめる。
「ちゃんと説明してくれよ」
比呂美はため息をつきながら答える。
「もう、怒んないでよ。私も悪かったと思ってる。誤解させるような形になっちゃたんだものね」
「誤解?」
「じゃ、始めから説明するね」
そういうと比呂美は朋与との会話を思い出しながら語り始めた。

「思い出に残るバレンタイン?」
朋与は比呂美の言葉をそのまま疑問系にして返す。人影の殆ど無い道を歩きながら二人は会話を続けた。
「うん、ほら、私は初体験を…いい思い出にならない形に自分からしちゃった訳じゃない?」
「そうだったわね」
「私はもう二度と思い出を裏切るような真似はしない。そう決めたの。思い出を大事にしたいから…だからバレンタインも思い出に残るようなものにしたいのよ」
「ふんふん、それで?」
「どうしたら思い出に残るバレンタインになるのかしら」
適当に相槌を打っていた朋与は少しふざけ気味に答える。
「じゃあさ、全身にチョコ塗って、私を食べてぇん♪なんつってね…」
「うん、それも考えたんだけど。部屋が汚れるとか、途中でトイレに行きたくなったらとか色々と面倒そうなのよね」
「…マジで考えてたのか」
朋与のふざけた提案も比呂美には真面目な選択肢の一つだったらしい。朋与は鞄を腋に抱えると小さくお手上げのポーズを取る。
「正直、独り者には荷が重い相談だわ…大体バレンタインってチョコをあげるだけのイベントでしょ。二人で何かやるようなイベントじゃないと思い出には残らないっていうか…」
朋与の言葉に比呂美は足を止める。朋与は遅れて立ち止まると比呂美の方に振り返る。
「比呂美?」
「それだわ!!!」
そう叫ぶと比呂美は朋与に抱きついた。戸惑う朋与に比呂美は嬉しそうに何度も礼を言う。
「ありがとう!ありがとう!朋与はやっぱり最高の親友だわ!」

比呂美の説明を聞いていた眞一郎。だが戸惑いの表情は未だ消えていない。
「結局どういうことなのかよくわからないんだけど」
眞一郎は比呂美の持っている買い物袋に今更ながら気がついた。
「それは?」
「ああ、これ?ケーキの材料。いい材料が売ってる店が遠いとこなのに割と早く閉まっちゃうから、部活も途中で抜けてきちゃったわ」
「ケーキ?」
「うん、それじゃこれからザッハトルテ…チョコレートケーキを作ります」
比呂美の言葉とともに眞一郎の表情がぱっと明るくなる。
「なんだよ。今から用意するのか。なんだよ。早く言ってくれよ」
眞一郎はにやけながら時計を見る。
「そういうことなら。じゃ、俺一旦家に戻るよ」
「何言ってるの?眞一郎君が作るのよ」
比呂美の反論に眞一郎の目が丸くなる。
「へ?俺が?比呂美が作るんじゃ…」
「正確に言うなら私が教えながら眞一郎君が作るのよ」
「俺が?」
「そう、二人で作るの。普通に共同作業とかにしたら結局私が中心になっちゃうでしょ?だからそういう形にするの」
「二人で…」
「そう、二人で一緒に行うならきっといい思い出になる。私が初体験の思い出を台無しにしちゃったのも一人だけで突っ走ったから…だから…今度は二人で一緒にしたいの…」
遠い目をしながら呟く比呂美。眞一郎は優しい瞳でため息をついた。
「大体わかったよ。でもなんでケーキなんだ?」
「普通のチョコレートじゃ流石に簡単すぎるもの」
「なるほど」
比呂美の答えにようやく全てを納得できた眞一郎は上着を脱ぐと腕まくりをした。
「よし、それじゃ何からするんだ」
「うん、じゃあ、まずバターと薄力粉を用意しようか」
こうして二人のザッハトルテ作りが始まる。料理などしたことのない眞一郎は作業に手間取ってしまい、ようやく完成に漕ぎ着けた時はもう日付が変わった後だった。完成後に二人で食べたその味は決して美味しいとは言えないものだったが、比呂美と眞一郎にとっては忘れられないものになったと言う。

そして疲れきった眞一郎はそのまま比呂美の部屋のベッドで泥のように眠ってしまう。比呂美もまた眞一郎の寝顔を幸せそうに見つめながら眠りに落ちていく。エッチをしないままに二人で一緒に眠る…それは彼らにとって初めての事であった。




###########

あとがき:

書きかけのまま放置していたこの話もようやく完成。本当ならもっと早く書き上げて第11話考察が終わるまで暫定非公開になるはずだったのだが、考察とほぼ同時に公開と言うことになりました。二次創作の遅れっぷりは本当にどうしようもないくらいにひどいな。当初の予定ではサクサク進めていって7月期の話から現実の時間軸に合わせて公開にしたいなあとか思ってたんだが…現実はうまく行かない。

今回の話と12月中旬の「親子の絆」は当ブログで二次創作小説を扱うことを決意させた話…ていうか考察や分析で比呂美の行動や心理の問題点を暴く以上、それをフォローする話が必要だと言う考えから二次創作小説連作の公開を決意しました。考察を読んだ後にこれらを読んで比呂美の抱える罪を許せるものだと感じてくれたら幸いですが。

実はザッハトルテとか食ったこと無い。一回食ってみたいな。

比呂美の部屋にはきっとオーブンレンジがあるはずだ。画面に出てこないだけで。
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