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2008-05-07(Wed)

一年次01月上旬:「冬休みのとある一日」比呂美Side

true tears 二次創作小説です。本編全話視聴終了済みの方のみご覧ください。



一年次01月上旬:「冬休みのとある一日」比呂美Side

このSSには関連作としてあさみSideがあります。こちらからどうぞ。






それは冬休みの最後の日のこと。比呂美と眞一郎は町外れのパボーレでの買い物を終えて街中へと戻り始めた。比呂美はよほど嬉しい事があったのか微笑を絶やさず、さらには時折両手を広げてくるくると回ったりしている。
「そんな嬉しそうな笑顔、初めての気がするな」
眞一郎は今までの比呂美の姿を回想する。最近の比呂美は同居時代の悲しそうな顔ばかりのころとは雲泥の差だが、今日は特に嬉しそうだ。
「ふふふ、だってさ。しょうがないじゃん」
比呂美は左手の甲を目の前に翳して眺める。その薬指には指輪が嵌っていた。
「でも本当に貰えるなんてね」
「いや、クリスマスに指輪が欲しいってねだったのはお前だろ」
「おもちゃでもいいからって思ってたのよ。私は」
「いや、玩具じゃ駄目なんだ。俺たちの想いの大きさは玩具じゃ表せない」
指輪は高級品ではないとはいえ、それなりの大きさのダイアモンドとその両脇に小さなルビーのついた本物の貴金属だった。比呂美は指輪を右手で撫でながら呟いた。
「そうね。そうよね。玩具じゃ私たちの愛の重さに潰されちゃうわよね」
「ごめんな、遅くなって。予算に今年のお年玉もつぎ込みたかったから」
「ううん、それよりクリスマスプレゼント。そんなマフラーで良かったの?」
眞一郎は自分の首に掛かっているピンク色のマフラーを口元に近づけた。
「ああ、これがいいんだ。お前が着けていたマフラーが。お前の匂いの残っているマフラーが」
「ふふふ、なんかえっちね。でも同じのがまだ売っていてよかったわ。これでペアルックよね」
比呂美もまたピンク色のマフラーをしていた。こちらは先ほど買ってきたばかりの新品でまだ匂いとかは付いていない。
「あ、どうせならさ、そのマフラー、今度交換しない?」
「え?どういうこと?」
「うん、眞一郎君の匂いが付いたころ交換すれば、私も眞一郎君の匂いを感じられるよ。そうやって交換し続ければお互いずっと匂いを嗅ぎ続けられるわ」
「なるほど」
比呂美は自分のマフラーを少し巻きなおすと、また左手の指輪を眺め始めた。
「ああ、やっぱり幸せ。すごく幸せ。ああ、この幸せを誰かに伝えたい」
そしてまたくるくると回りだす。回りながら交差点を曲がると、かつて見慣れていた風景が比呂美の目に入った。そして回転を止めてじっとその風景を見つめる。そこは今川焼き屋あいちゃんの前だった。
「あいちゃん!あいちゃん寄ってこ!」
「え?そ、それは…」
「うん、どうしたの?いいじゃない」
比呂美は眞一郎の手を握ると強引に引っ張り始めた。
「ほらほら、早く。でも何年ぶりかな?二人で来るの?確か小学校4年生以来かな?最初に来たのは小2の秋だったわね」
「よ、よく覚えて…いや、それよりも…」
「ん?まあいいわ。早く入りましょ?」
二人はそんな会話の後、今川焼き屋に入っていく。そして自動ドアをくぐると比呂美は大声で挨拶をした。
「やっほーっ!愛ちゃん!久しぶり!」
「ひ、比呂美ちゃん…ど、どうして…」
愛子は予想外の来客に動揺を隠せない。比呂美の後ろでは眞一郎が右手を垂直に立てて謝罪のポーズをしていた。そして比呂美は一番奥のテーブルの通路側に腰掛けると眞一郎を手招きで呼び寄せる。
「ほら早く」
眞一郎が対面に座ろうとすると比呂美は眉をしかめた。
「違うでしょ。こっち」
比呂美は自分の隣の席を平手で叩いて示す。眞一郎が指示どうりに隣に座ると比呂美は満足そうな顔で店内を見渡した。
「本当久しぶり。あれ以来かな。変わらないわねここは。っていうか最初に来たときから何も変わってないよね」
愛子は引き攣った顔で比呂美に尋ねる。
「な、何にする?」
「いつもの…覚えてる?」
「う、うん」
「じゃ、最初のときは?」
「え?流石にそれは…」
「つぶ2こし1クリーム1。眞一郎君ってば奢ってやるって言ったくせに財布忘れてて」
「そ、それは覚えてるよ」
「そう店員に平謝りして、愛ちゃんが助けてくれたのよね」
「そ、そうだね…」
「あ、トランプとかまだある?」
「や、もう捨てちゃったよ…随分痛んでたし…」
店に入ってからおかしな態度を続ける愛子の姿にを比呂美も段々は訝しさを感じはじめる。
「どうしたの?何か変よ」
「ゆ、湯浅って愛ちゃんたちと知り合いだったんだな」
そこに割ってはいる三代吉。いつもと感じが違う比呂美に戸惑っているようだった。
「あら、野伏君。いつからいたの?」
「さ、最初からいたよ」
どうやら比呂美の視界には愛子の隣にいたはずの三代吉の姿は入ってなかったらしい。
「そういや愛ちゃんと付き合ってるんだっけ?」
だが誰も比呂美の言葉に答えない。辺りにはただ沈黙が流れていた。
「な、なによー。空気が変よ。なんで誰も答えないの?」
「え、えっと…」
言いよどむ愛子。そこに眞一郎がテーブルを叩きながら席を立ちあがる。
「比呂美!今度にしよう!」
そういって比呂美の手を引っ張り強引に立ち上がらせる。
「な、なんで…」
「ごめん、愛ちゃん」
そういうと眞一郎は比呂美の手を引いて店を出て行った。
自動ドアが比呂美の抗議の声を遮断すると愛子はほっと胸を撫で下ろした。
三代吉はそんな愛子を黙って見つめながら今川焼きをつまみ食いするのだった。

「ちょっとなんで…」
手を引っ張って先に進んでいく眞一郎の後姿はどこか寂しげだと比呂美は感じた。だがそれよりも今は先ほどの店の雰囲気のことだ。
「ひょっとして愛ちゃんと何かあったの?」
比呂美が思い付きでした質問に眞一郎の腕がピクリと動き、彼の歩みが止まる。比呂美は彼の手を強く握った。
「ね、話して」
だが彼は前を向いたまま何も答えない。
「…今更隠し事?婚約者に?」
眞一郎は恐る恐る振り向きながら呟いた。
「…キス…」
「は?」
比呂美は言葉の意味を理解できずに聞き返す。
「…キスされた…愛ちゃんに…」
「な!なんですって!!い、いつの話よ!」
歩み寄る比呂美に眞一郎は少し後ずさりながら答える。
「…乃絵と付き合うことになった日…かな…」
比呂美は親指の爪を噛み締めながら呻いた。
「…ファーストキス…あんの豆狸め…」
そして眞一郎を睨みながら続ける。
「…でも愛ちゃんはもう野伏君と付き合っていたんでしょ?」
眞一郎は比呂美から目を背けながら答える。
「…愛ちゃんは本当は、俺がずっと好きだったらしい…あ、でも俺はすぐに断ったぞ!愛ちゃんのことはそんな風には見れないって!」
「…そうなんだ」
比呂美は暫く考え込むとため息をついた。
「分かった。眞一郎君は先に部屋行って待ってて。ちょっと愛ちゃんと話してくる」
眞一郎は比呂美の真剣な顔を見つめるとやがて納得したように呟いた。
「あんまりいじめない様にな」
「うん、分かった。あんまりいじめない」
そして比呂美はまた今川焼き屋へと足を向けた。

「いらっしゃいませ!」
開く自動ドアに合わせて店内に愛子の声が響く。
「いらっしゃいませ」
ワンテンポ遅れて微妙にやる気なさげの挨拶をした三代吉は愛子の雰囲気がおかしなことに気づく。三代吉がお客の姿を見るとそれはやはり湯浅比呂美だった。
比呂美はカウンター席、それも愛子の前に座ると愛子をじっと見つめた。
「ちゅ、注文を…」
愛子の言葉を無視して愛子をじっと見続ける比呂美。やがて目をつぶるとコーラを注文した。
「こ、コーラね」
愛子は冷蔵庫側にいる三代吉を頼らずにわざわざ自分でコーラを取りに行く。三代吉は自分の傍を通り過ぎる愛子の横顔を見つめていた。
「キス、したんだってね」
比呂美の言葉に凍りつく愛子。彼女の真横でそれを見つめる三代吉。
「相手の気持ちも考えずに」
目をとじたまま続ける比呂美。その言葉をきっかけに動き出した愛子は猛スピードでコーラを取り出すと栓を抜いてストローを挿し比呂美の前に突き出した。
「ひ、比呂美ちゃんが悪いんだからね!ほかに好きな人がいるって嘘なんてつくから!」
「あなたも犠牲者だっていうのね」
比呂美は目を開けると目の前の愛子を睨んだ。
愛子は比呂美の迫力に少し怯みながらも必死でそれを跳ね返す。
「あ、あんたになら負けてもしょうがないって!でも、ぽっと出の娘になんかに取られたくなかった!!」
比呂美はコーラを一口啜ると呟いた。
「そうね。私も悪かったわ。ごめんなさい。色々あったのよ私も…」
遠い目をする比呂美を見つめながら愛子は尋ねる。
「色々?」
「うん、今はまだ話せないけど…いつか話すわ」
愛子は比呂美がいつの間にか優しい目で自分を見つめていることに気がついた。そしてか細い声で謝罪の言葉を搾り出す。
「ごめん…」
「あたしたちのはっきりしない関係が、愛ちゃんにも変な期待をさせちゃったみたいだけど…安心してもう大丈夫」
そういうと比呂美は今までテーブルのしたに隠していた左手の甲を愛子の目の前にかざした。
「もう誰も私たちの間には割り込めない」
薬指が放つきらめきに暫く呆然としていた愛子。やがて目を丸くしながら叫んだ。
「ゆ、指輪!!!」
「そう、婚約指輪。今日買ってもらったんだ」
比呂美は嬉しそうに指輪を撫でる。
「こ、婚約!??」
三代吉もまた目を丸くしながら愛子たちのほうに近づいてきた。
「あら、野伏君。聞いてたの」
「いや、いるんだから聞いてるよ…」
三代吉は比呂美の言葉に眉をしかめる。比呂美はそんな三代吉に気づかずに続けた。
「まあ、正確には、今夜おじさんたち…彼のご両親に報告して了承されればね。まあ反対される理由はないと思うけど」
「し、信じられない…まだ高校生なのに…」
愛子の呟きに比呂美はにこやかに答えた。
「そう?まあ、あなたの愛の大きさじゃあ理解できないかもね」
愛子は自分の恋愛感情のスケールが比呂美には及ばないことを痛感した。
「やっぱ、かなわないな…比呂美ちゃんには」
比呂美はコーラを啜ると肘をついて愛子のほうに身を乗り出す。
「ね、いつから好きだった?」
「う、うん…小4の春くらいかな。比呂美ちゃんは?」
「はっきり自覚したのは同居してからかな」
「えーっ!じゃあ自覚なかったんだ」
「ふふ、でも小2の夏からよね。自覚がなかったとしても」
「それちょっとずるくない?」
笑いながらする二人の思い出話。三代吉はそれを寂しげな顔で暫く聞き続けるはめになったのだった。

後日、比呂美はあさみからベンチへ呼び出された。あさみの話は眞一郎の荷物の指輪ケースを見たとの事だった。比呂美は婚約した事、学校で距離を置く理由などを説明する。愛欲の昂揚にブレーキを掛ける自信がないからだと。するとあさみは仕切りに感心した。
「大人だーっ」
比呂美は本当の大人ならキチンと自分を制御出来るものであって、自分の事ではないと思ったがあさみには話さなかった。自分はちゃんとした大人ではないにしろ少女と呼べるような者ではなくなっているから。そして目の前にいる現役の少女がちょっと羨ましくなったから。いつから自分は少女でなくなったんだろうと考える比呂美。やはり眞一郎への想いに気づいてからだろうと思う。多分、恋では収まらない激しい愛を知った時、少女は女に成らざるを得ないのだろうとの答えにたどり着く。まだ16歳だというのに愛を知り女に成り少女を卒業してしまうのは幸運だろうか?不幸だろうか?その問いに対する答えは比呂美の中には生まれなかった。ただ今現在、目の前にいる本物の少女がちょっとだけ羨ましいという確実な事実だけが存在していた。そんな比呂美の想いを知らぬあさみ。彼女はこの件は秘密にしたほうがいいよねと確認するも、比呂美はどちらでもいいと答える。噂になれば牽制になるしねと付け加えて。やはり大人だと感心しながら去っていくあさみ。彼女と別れた後、比呂美は眞一郎へ携帯メールを打つ。内容は「Yes」のみ。これだけで晩御飯とその後のお楽しみを表してくれる。ちょっとした暗号だ。比呂美はこの少女でなくなる事の是非を眞一郎に相談してみようと思った。寝物語として。
「本当、少女ならそんな事考えないわよね」
比呂美は苦笑しつつも携帯をポケットに仕舞い校舎へと戻っていくのだった。
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