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2008-05-07(Wed)

一年次01月上旬:「冬休みのとある一日」アサミside

true tears 二次創作小説です。本編全話視聴終了済みの方のみご覧ください。



一年次01月上旬:「冬休みのとある一日」あさみside








それは冬休みの最後の日のこと。あたしは町外れのパボーレにちょっとした買い物をしにいった。買い物というのはとあるマイナーな少女漫画雑誌。マイナーなので近くの小さな本屋では取り扱ってない。予約すれば取り寄せてもらえるのだろうが、さすがにそこまでするのも抵抗がある。まあそんなわけで無事にブツを購入、すぐに家路につくことにした。
あたしが早歩きで道を進んでいくと、かなり前のほうにカップルの姿があった。女性のほうは何か嬉しいことでもあったのかくるくると回りながら長い髪を揺らしていた。男のほうは片手に紙袋を持ち、ピンクのマフラーをしている。男がピンクって珍しい気がする。だがよく見れば女性のほうもまたピンクのマフラーをしていた。
「ペアルックってことですかい。お熱いですねぇ」
あたしは手荷物をぎゅっと握り締める。いつのまにかあたしの歩調は早歩きから普通くらいになっていた。だが、さっきからちょくちょく回り続けている女のせいか、カップルの歩みはかなり遅い。あたしとの距離は次第に狭まっていった。
「あれ?」
カップルの顔が判断できる距離ではなかったが、あたしは彼らが何者かを認識することが出来た。なんのことはない。クラスメイトだ。比呂美と仲上君だった。
「仲良さそう…」
あたしは二人の姿に違和感を覚える。何故なら、二人は学校ではとくにベタベタしていないからだ。確かに先月の祭りの後、彼と話していたあたしたちに警告をかけてきて、どうも蛍川の四番から仲上君に乗り換えたらしいという噂にはなった。だがそれが本当のことなのか未だにはっきりしない。冬休み前に一度あたしが仲上君に問いただそうと話しかけたら、鬼のような形相で比呂美から睨み付けられた。あたしは思わずびびって仲上君との話を中断してしまった。それ以来、あたしたちの間では取り敢えずは二人は冷血カップルという仮定になっている。
「学校でもあれくらいイチャイチャしてればいいのに」
ときおり小刻みに揺れる彼女の頭を遠くに見ながらあたしは比呂美の笑顔を思い出した。そしてさらに別の顔も重い浮かべる。警告のときの乾いた瞳、鬼のような形相。どれが本当の比呂美なのだろうか?あたしは比呂美とは割と仲がいいほうだと思ってたけど、どうやらそれは勘違いだったようだ。
そうこうするうちに二人との距離が縮まり、なんとか表情が確認できるくらいになった。あたしは仲上君の横顔をじっと見詰める。やっぱりわりとかっこいい。イケメンと断定できるほどではないが、70点くらいはいけるのではなかろうか。あたしは踊りのときの彼の真剣な眼差しを思い出した。おそらく比呂美も踊りのときの彼に惹かれてしまったのだろう。でも一年以上も同居して気づかなかったのだろうか?彼女は誰もがイケメン断定できるような男と付き合い、そして祭りの後あっさりと乗り換えたのだ。
「つまるところようするにライバル役なのよね」
美人で成績優秀、スポーツ万能、で気移りしやすい。これモロに少女漫画の悪役。とりえのない主人公と最高ではないにしてもちょっといい男を取り合って争うライバルの美少女だ。少女漫画の王道パターン。比呂美の性格はそういうライバルが似合うような高飛車じゃないと思っていたが、最近の彼女を見る限り、そう断言出来なくなってきている。これはきっと隠れていた本性があらわになってきたということだろう。つまりライバル役の比呂美は仲上君とは結ばれない。そうに決まってる。やはり仲上君にはもっと普通の女の子のほうが合う。そうに決まってる。彼に合うのは…
あたしの考えが纏まる前に比呂美と仲上君は交差点を曲がり、二人の姿はあたしの視界から消えた。
「やばい。見失う!」
思わず走り出すあたし。だが何がやばいのか自分でもよく分からない。あたしが息を切らせながら交差点にたどり着くと、そこには仲上君と手をつないで引っ張る比呂美の姿があった。
「ほらほら、早く」
二人とあたしとの距離はかなり近くなっていて彼らの声を聞くことも出来た。あたしは慌てて電柱の影に隠れる。
二人はあたしには気づかなかったようで、そのまま話を続けた。
「でも何年ぶりかな?二人で来るの?確か小学校4年生以来かな?最初に来たのは小2の秋だったわね」
「よ、よく覚えて…いや、それよりも…」
「ん?まあいいわ。早く入りましょ?」
二人はそんな会話の後、今川焼き屋に入っていった。残されたあたしは二人の会話に混乱していた。小学校?二人で?それってようするに…
「幼馴染…」
そうだ。なぜ気がつかなかったんだろう。比呂美が仲上家に引き取られたのは親同士が友人だったからって言ってた。つまりは家族ぐるみで付き合っていたのだ。もともと二人はかなり近い位置にいたのだ。そして両親との死別で同居する。同居をきっかけに関係の進展を期待するも逆にギクシャクしてしまい、ついには好きでもないイケメンと付き合ってしまう。だがそのことが互いの重要性を再認識する引き金になって結局は幼馴染と恋人同士になる。少女漫画のパターンの一つだ。つまりは彼女はライバルなどではなく主人公だったのだ。主人公だから当然意中の相手と結ばれる。そうに決まっている。
「はは、始まる前に終わっちゃったな。あたしの恋…」
あたしはいつも脇役だ。そして今回も。あたしが主人公になるときがいつか来るのだろうか?あたしはとぼとぼと歩き始める。そしてすこし物悲しくなって空を見上げるとまた雪がちらつきだしていた。
「さむっ」
急に寒さを感じたあたしは近くの自販機でコーンスープを買ってゆっくりと飲んだ。
「あたしの手を温めてくれるのは男の子じゃないんだな」
そしてコーンスープを飲み終えた後、おもいっきり背伸びをした。
「ふう、さ、帰ろう」
そして空き缶をゴミ箱に投げ入れる。だが空き缶はゴミ箱の角に当たって跳ね返りやや下りになっている道を転がっていく。
「しかたないな」
あたしは次のゴミ箱まで空き缶を蹴っていくことにした。

そして暫く空き缶を蹴り続けていると少し前にゴミ箱を発見出来た。
「翼くん、ドライブシュート!」
掛け声とともに思い切り空き缶を蹴飛ばす。だが空き缶はゴミ箱の正面の横っ面にぶつかると大きく跳ね返りあたしの横を通り過ぎていった。
「ああっと、惜しい。コーナーポスト」
仕方なくあたしが後ろを振り返ると、そこには空き缶を拾う仲上君の姿があった。
「え?」
彼は空き缶を拾うとそれを高く放り投げ、きれいな放物線がゴミ箱に流れていった。
「よ」
「あれ?一人?」
彼の挨拶にあたしは辺りを見回しながら応えた。一緒にいるはずの比呂美の姿がない。
「さっきまで比呂美と一緒にいたよね?」
「あ、ああ、ちょっと用があるらしい」
仲上君は後ろを気にしながら呟いた。
(彼一人か…)
あたしはこれは二人の関係を明確にするチャンスかもしれないと思った。
「あ、あの、比呂美と付き合って…」
だがそこに突如マラソンの練習をしているような人たちが現れた。
「邪魔だどけ!」
そして仲上君を弾き飛ばしながら前に進んでいく。転倒する仲上君を無視してマラソンランナーたちは走り去っていった。
「あいたた」
「大丈夫?荷物拾おうか?」
あたしはそういうと彼の落とした紙袋を拾い上げ、少し零れた中身も紙袋に入れていく。「あれ?」
その時あたしは零れた荷物の中に指輪のケースを見つけた。あたしはそれを拾い上げるとケースは半開きで中身は入ってなかった。
「こ、これって…」
起き上がった仲上君は慌てて指輪ケースをあたしから奪い取り、少し照れながら呟いた。
「だ、誰にも言わないでくれるかな」
「う、うん」
あたしは戸惑いながら紙袋を差し出す。彼はそれを受け取って指輪ケースを中にしまった。
「そ、それじゃあ」
小走りで去っていく彼の後姿を見つめながら、あたしは先ほど見かけたクルクルと回りながら喜ぶ比呂美の姿を思い出した。
「婚約…だよね。すごいな。まだ高校生なのに…主人公だよね…」
そう、あたしは未だ脇役だ。主役になれない脇役。いつになったら脇役から抜け出すことが出来るのだろう。どうしたら主役になれるのだろう。あたしが空をまた見上げると、雪の振り方がさっきよりほんの少し強くなっているように思えた。あたしはこぶしを握り締めた後、両腕を開いて空に向かって叫んだ。
「くそーっ!いつか主役になってやるーっ!!」
「おっと」
誰かがあたしの伸ばした腕にぶつかりそうになってよろけた。あたしがその誰かのほうを見つめるとそこにはサウナスーツみたいなのを着込んだ青年の姿があった。青年は上体を傾け両手を腿につけて肩で息をしていた。恐らくは先ほどのマラソンランナーたちの仲間であろう。
「す、すみません」
あたしが謝罪すると彼は汗だくのつらそうな顔を向けてきた。
「だ、大丈夫ですよ」
青年はすごくイケメンだった。90点はいきそうだ。おまけに汗まで掻いている。あたしが見惚れていると彼は息を整えなおしまた走り出した。あたしは少し崩れたフォームで走り去っていく彼を見つめ続けた。
「か、かっこいい…恋しちゃったかも…」
彼が視界から過ぎ去っても呆然としていたあたし。我に返って彼の消えた方向に歩き始める。
「まってよ!あたしの恋!」
そうして走り出したあたしはどこまでも春を追いかけてくのだった。そう、春は向こうからはやってこないのだから。

後日、あたしは結局イケメンランナーを取り逃がしたことを悔やみながら、比呂美と二人だけになる機会を待った。そして彼女をベンチに呼び出して先日のことについて話を聞いてみた。
「ああ、見たのね。うん、そうよ。彼のご両親の承諾も貰って晴れて婚約成立ね」
「え、気が早くないかって?そうね普通のカップルとは違うわね。でもこれが二人にとっては自然なことなのよ」
「そこまで好きなのになぜ校内で一緒にいないのかって?うん、それはね…ブレーキを掛ける自信がないからよ」
「うん、つまりはね学校ではキスすら許されない…先生とかに見つかったらね、大変でしょ」
「でももし昂ぶって来ちゃったらあたしは、あたしたちはもう自然にキスとかしちゃいそうなのよ…TPOとか弁えずに」
「え?見つからなきゃOKだって?うん、そういう考え方だとキスが当然になって、そこから先も見つからなきゃOKになって、いずれは…」
「だからね、最低キスくらいは許される場所じゃないとね。困るのよ」
「それにひょっとしたらキスだけじゃ昂ぶりを満足させれないかもしれない…」
「やっぱり自分の部屋が一番よね。昂ぶったならそのまま突っ走ればいいんだから」

彼女の話を一通り聞き終えたあたしは驚愕を隠せなかった。
「どひーっ!大人だーっ!少女漫画の領域越えてるよーっ!」






このSSには続きの関連作として比呂美Sideがあります。こちらからどうぞ。

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