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2017-01-13(Fri)

二年次九月中旬:風と塒(外伝:石動乃絵)

true tears 二次創作小説です。本編全話視聴終了済みの方のみご覧ください。


二年次九月中旬:風と塒(外伝:石動乃絵)

注:今回は湯浅比呂美の出番はありません



二学期が始まって少し経ってはいるが、9月とは言えまだまだ残暑は残る。時刻は4時前、ちょうど下校時刻のために道行く生徒たちがあちこちに見える。そんな中、下校生徒の一人であるところの日登美は、手で顔を仰ぎながらだらけた顔をしていた。
「あー暑い。早く涼しくならないかなあ」
「秋になったらあっという間に冬だよ。あたし寒いの苦手なのよね」
そう答えたのは桜子だ。彼女はメガネを直しながら更に続ける。
「雪が積もることはそんなに嫌いじゃないんだけど」
「あたしは夏のほうが苦手だよ。まあ雪も面倒ではあるんだけど」
日登美は寒いのは平気だが雪かきの仕事は嫌いだった。雪国に生まれなければこんなことやらずに済むわけで、そう考えると不平等極まりないというのが彼女の持論だった。
「えー?雪合戦とか楽しいじゃん」
「子供かよ」
桜子の反論に突っ込んだ日登美。そして今度は石動乃絵の方を向いて尋ねた。
「乃絵は夏と冬どっちが好き?」
「冬。寒いのも雪も平気。どっちも好き」
石動乃絵は微笑みながらそう答える。友人二人も釣られるように笑みを返す。
「あんたってなんか冬の妖精って感じするもんね」
「そうそう。肌白いし」
そう言って桜子は乃絵の頬を人差し指で突っついた。
「やめてよー」
だがそういう乃絵も本気で嫌がっているようには見えない。以前の彼女ならこの手の友達同士のじゃれ合いには不快感を感じていただろう。石動乃絵も少しずつ変化をしているのである。
そんな時、道行く彼女たちを呼び止める声が聞こえた。
「ひーちゃん、ひーちゃん」
声の方に日登美たちが振り向くとそこには買い物袋を下げた中年女性の姿があった。
「あ、おばさん。久しぶりです」
どうやら彼女は日登美の親類らしい。
「この間尋ねたときにはひーちゃん留守だったもんね」
その後日登美と中年女性はしばらく世間話を続けた。所在のない桜子と乃絵。桜子も自分と無関係な会話に付き合うのは嫌いだったが、石動乃絵は桜子以上にそれが大嫌いだった。痺れを切らせた乃絵が先に帰ることを告げようと口を開く。
「わたし先に帰るね」
「あ、うんあたしも」
二人が帰るというのなら自分も一緒に行きたい。日登美はそう考えておばさんとの世間話を打ち切ろうとした。
「じゃ、じゃああたしもそろそろ…」
だがおばさんは日登美の制服の半袖の端を掴んだ。
「せっかくあったんだからここで言うけど…おばさんちょっとひーちゃんに頼みがあるのよ」
「なんでしょうか?」
日登美が向き直るとおばさんは真剣な表情を見せて声を細めた。
「ここだけの話なんだけど…」

日登美とおばさんの会話は少し気になったが、他人の家に関わることかもしれない。そう考えた桜子は乃絵と一緒に帰路を進めた。
「親戚も近くに住んでる人って多いよね。田舎だからかな」
「わたしは親戚とかいないけど」
「乃絵は孤独だな-。よしよし慰めてあげよう」
「別に寂しくないんだけど」
二人がそんな会話をしていると後ろから日登美の声が聞こえた。
「待ってよ~」
二人が振り向くと日登美が駆け足で近づいてくる。
「もう用事は終わったの?」
桜子の質問に日登美は首を横に降って答える。
「ううん、今から…ちょっと付き合ってくれないかな。良かったらでいいけど」
「内容次第だよ」
「そりゃそうか…実はね…」

日登美の話を要約すると、彼女のおばさんの家には春から親戚の女子大学生が通学のために居候をしていたという。だがこの9月から大学に通わずに引きこもりになってしまったという。より正確に言うのなら夏休みに入った頃から引きこもり状態を続けていたらしい。おばさん夫婦も夏休みの段階では何も言わなかったが、休みが終わって講義が始まった段階に入るとさすがに口を挟まずにはいられない。だがおばさん夫婦が何を言っても彼女は何も答えないという。そこで歳の近い日登美に説得を試みてほしいというのだ。
「なるほど。引きこもりですか」
桜子は腕組みをして考える。乃絵はそんな桜子を見て首をかしげた。
「引きこもりって何?」
桜子と日登美はため息をついた。
「あんたって成績いいわりに常識的なこと知らないよねえ」
「うんうん」
そんな二人の言い分に乃絵を口を尖らせる。
「学校で習わないことは知らなくてもしょうがないじゃない」
「まあまあ、別に責めてるわけじゃないよ」
日登美が乃絵を宥めていると今度は桜子が首をかしげた。
「でも、なんであたしたちまで?」
「うん。実はあたしも鷹美さんとはあんまり話ししたことないんだよね。親戚の集まりで何度か顔を会わせたことがあるくらいで」
「なるほど。応援要請か」
桜子も納得したらしい。だが乃絵はそれに口を挟んでくる。
「でも他人の家のことに首をつっこんでいいの?」
「うぐ…さっきの…」
「気にしないでよ。応援連れてってもいいって言われてるし、それにお小遣いももらっちゃったんだよね」
どうやら日登美は報酬を前払いでもらってしまっているらしい。
「なんかおごってくれる?」
「いーよいーよそんなに高いものじゃなければね」
どうやら報酬額はそれなりのものだったようで日登美も太っ腹だ。
「そんじゃ喫茶店でケーキセットあたりで」
「OK。乃絵はどうする?」
「付き合うわ」
そんなこんなで3人は日登美のおばさんの家に向かうこととなったのであった。

「ふぁああ」
戸屋鷹美が目を覚まして伸びをしたら時刻は4時過ぎだった。だが彼女は時計を見ようとしない。彼女の頬には枕代わりにしていたノートパソコンのキーボードの後がついている。そして液晶とキーボードが平面状になるまで開かれたノートPCのタッチパッドの部分にはよだれが付いていた。
「いつの間にか寝ちゃってたか」
彼女は布団の中にノートPCを持ち込んでネットサーフィンをして、そのまま寝落ちしていたのだ。
「トイレ行こう」
彼女が部屋のドアを開くとちょうどそこに一階の玄関の開く音が聞こえた。
「おじゃましま~す。親戚の日登美で~す」
「その友人たちです」
聞きなれない声に反応し、鷹美は慌てて部屋に戻って鍵を掛ける。
「日登美?親戚?そういえば年下の子にいたような…」
すると話し声と階段を昇る足音が聞こえてくる。鷹美は布団の中に潜り込んだ。
「なんで親戚の子が?」
小声でつぶやいた後で息を潜めているとやがてドアの向こう側から声が聞こえてくる。
「鷹美さーん、親戚の日登美でーす。ちょっと話をしましょう」
(こっちは話すことなんてないわよ!)
布団の中でひとりごちる鷹美。ドアノブをひねろうとする音が部屋の中に響く。
「鍵かかってるじゃん」
「大丈夫、鍵も預かってる」
日登美とやらは仲間を引き連れてどうやら鷹美の説得役をするつもりのようだ。やがて解錠音の後でドアが開かれて部屋の中に3人の異邦人が侵入してきた。
「勝手に入ってすみません。おばさんから話を聞くように言われてたんで…」
鷹美は布団から跳ね起きて日登美を睨みつけて叫んだ。
「もうほっといてよ!私はずっとここをねぐらにして生きていくんだから!」
そして再び鷹美は布団の中に潜り込む。
「何があったか教えて下さいよ」
「…無理して聞かないほうが…」
日登美の協力者にはどうやら多少は話がわかるものもいるようだ。
「でもずっと部屋をねぐらにこもりっきりって良くないよ」
するとそれまでずっと黙っていた乃絵が口を挟んできた。
「ここがねぐら?本当に?」
鷹美は乃絵の声に反応を返す。
「そうよ…ここは私のねぐらよ…」
布団をしばらく黙って見つめ続けた乃絵は立ち上がって部屋から出ていく。
「ちょ、乃絵?」
「ちょっとまってて…すぐ戻ってくるから」
乃絵はそういうと走って家の外に出ていってしまうのだった。

日登美は布団を突きながら鷹美に話しかける。
「いい加減教えてくださいよー。いじめですか?」
「大学でいじめってあるの?」
「いやよく知らない」
日登美と桜子はそんな会話を続けながらふと時計を見るとすでに四時45分近くになっていた。
「乃絵遅いな…」
「すぐに戻ってくるとか言ったのに」
そんな二人の会話に答えるように階段を駆け上がってくる足音が響いた。
「ごめん遅くなった」
「おそいよ…ん?」
息を切らせている乃絵を見て驚く二人。乃絵は白いニワトリを抱きしめていたのである。
「どうしたの?」
「それ学校のニワトリだよね。たしか名前は…」
「地べた」
乃絵はそう言うとニワトリを床に置き、ニワトリの正面に回り込んでしゃがんだ。
「お願い」
乃絵の声に反応するかのように地べたは鳴き声を上げて暴れ始めた。
「コケー!コッコッコ!」
「ちょ、乃絵何を」
暴れまわるニワトリに困惑する二人。やがて地べたは布団の上でも暴れまわる。
「や、やめてよ!」
そう叫んで起き上がる鷹美。乃絵はそんな彼女を見つめて微笑んだ。
「やっぱりここはねぐらじゃないって。地べたもそう言ってる」

乃絵が学校まで地べたを送り届ける間に鷹美と日登美、そして桜子は部屋の片付けをすることになった。片付けが終わったのは5時半ごろ。ちょうど乃絵も鷹美のところに戻ってきた。そんな乃絵に鷹美は文句を言おうと歩み寄る。
「あんたねえ…」
「明日から…あなたのねぐらを一緒に探してあげる。じゃあ…」
乃絵はそれだけ言うと鷹美の部屋を後にする。
残された三人はきょとんとするばかりだ。
「何なのあの子…」
「まあ変わってる子だよね」
「悪い子じゃないんだけどね」
そして鷹美は部屋の時計を見つめる。
(明日…私のねぐらを探す?どういうこと?)

翌日、乃絵と日登美、そして桜子は学校帰りに鷹美に所にやってきて、強引に彼女を外に連れ出した。
まず乃絵が鷹美を連れて行った先は噴水公園だった。公園についた乃絵は鷹美に尋ねる。
「ここはあなたのねぐら?」
鷹美は乃絵の言っている意味がわからず首を傾げる。
「え?違うんじゃないかな?」
「そう…じゃあ次」
その次はプール、その次は病院、スポーツ用品店、ファンシーショップ、ケーキ屋、ラーメン屋、バスターミナル、釣り堀などなど、乃絵は色んな場所に鷹美を引っ張っていく。
やがて乃絵たちは図書館にたどり着いた。
「ここはあなたのねぐら?」
もう何度も聞いたであろうそのセリフ。だが今回の鷹美には何かが違っていた。鷹美は何も答えずに図書館の中を見渡している。
「どうなの?」
乃絵の質問に鷹美は下を向いて答える。
「私…失恋したの…」
それまでほとんど口を閉ざしてきた鷹美が急に喋り出す。おどろく日登美と桜子。
「同じ大学の同じクラスの人で…告白したんだけど…ずっと本ばかり読んでる陰気な子は好きじゃないって…」
鷹美の目に涙が溢れ出す。
「でもしょうがないじゃない!私は本が大好きなんだもの!あの人も好きだったけど、おなじくらい本も好きなんだもの!」
そんな鷹美の独白を聞いた乃絵は微笑むのだった。
「つまりここがあなたのねぐらなのね」
「ねぐら…」
「ねぐらっていうのは鳥が羽根を休める場所、飛ぶのに疲れた鳥がまた飛べるように力を蓄える場所」
「力を蓄える場所…」
乃絵の言葉を反芻しつつ図書館を見渡す鷹美。やがて彼女は涙を拭って乃絵を見つめた。
「もし、ここが私のねぐらだというのなら…ここでずっと過ごせるようにしないと…それって私に司書になれってことなのかな?」
乃絵は鷹美の手をとって握りしめる。
「それはあなたが決めることよ」
鷹美は微笑みながら答える。
「私が司書になるためにはもっと勉強しないと…これ以上大学をサボるわけにはいかないわね」

「お待たせしました。本日のケーキセットでございます」
ウエイターがケーキと紅茶をテーブルに並べると桜子はツバを飲み込んだ。
「いやーただで食べるケーキは最高ですなあ」
「あんたなにもしてないけどね」
日登美のツッコミを無視しつつ桜子は尋ねる。
「で、結局鷹美さんはまた大学に通うようになったわけね」
「うん、失恋相手と顔を合わせるのは辛いけど、司書を目指す以上はちゃんと勉強しないとって」
「今回は乃絵のお手柄だよねえ」
「うん、やっぱ乃絵は一味ちがう子だよ」
そんな二人のやり取りを受けた乃絵はケーキをスプーンですくい取りながら答える。
「わたしは風にはなれないから…」
「どういうこと?」
「眞一郎は私が飛べるように、飛びやすいように風を起こしてくれた…でもわたしは風にはなれない…でも、だけども…」
乃絵がオープンテラスから空を見上げると、どこからか鳥が飛んできて喫茶店の近くの木の枝に止まった。
「それでも、そんなわたしでも他人のねぐらを探すことくらいはできるかもしれない…」
そんな乃絵を見つめる日登美と桜子。やがて二人は乃絵の左右の頬を突き始める。
「あんたは立派な風だよ」
「うんうん、すくなくとも鷹美さんにとってはね」
「やめてよー」
ひたすら頬を突く二人に乃絵は笑いながら抗議の声をあげるのだった。




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あとがき:

TV本編最終話に出てきた乃絵の友人キャラ、桜子と日登美はどっちがどっちかイマイチよくわからないのですが、とりあえずメガネの方を桜子としておきます。もしちがったら脳内で名前を入れ替えてください

本ブログでのtrue tears 二次創作小説では乃絵が主人公の外伝的作品も何本か脳内で考えているのですが、今回はそのうちの一本を
公開することにしました。のこりの乃絵メイン話である「つくりもののかち」と「Like A Rolling Thunder」については公開予定はありません。

今回のオリキャラ

戸屋鷹美(とやたかみ)
日登美の親戚。日登美の叔母の家に居候して大学に通う。

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