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2017-01-13(Fri)

二年次九月中旬:風と塒(外伝:石動乃絵)

true tears 二次創作小説です。本編全話視聴終了済みの方のみご覧ください。


二年次九月中旬:風と塒(外伝:石動乃絵)

注:今回は湯浅比呂美の出番はありません



二学期が始まって少し経ってはいるが、9月とは言えまだまだ残暑は残る。時刻は4時前、ちょうど下校時刻のために道行く生徒たちがあちこちに見える。そんな中、下校生徒の一人であるところの日登美は、手で顔を仰ぎながらだらけた顔をしていた。
「あー暑い。早く涼しくならないかなあ」
「秋になったらあっという間に冬だよ。あたし寒いの苦手なのよね」
そう答えたのは桜子だ。彼女はメガネを直しながら更に続ける。
「雪が積もることはそんなに嫌いじゃないんだけど」
「あたしは夏のほうが苦手だよ。まあ雪も面倒ではあるんだけど」
日登美は寒いのは平気だが雪かきの仕事は嫌いだった。雪国に生まれなければこんなことやらずに済むわけで、そう考えると不平等極まりないというのが彼女の持論だった。
「えー?雪合戦とか楽しいじゃん」
「子供かよ」
桜子の反論に突っ込んだ日登美。そして今度は石動乃絵の方を向いて尋ねた。
「乃絵は夏と冬どっちが好き?」
「冬。寒いのも雪も平気。どっちも好き」
石動乃絵は微笑みながらそう答える。友人二人も釣られるように笑みを返す。
「あんたってなんか冬の妖精って感じするもんね」
「そうそう。肌白いし」
そう言って桜子は乃絵の頬を人差し指で突っついた。
「やめてよー」
だがそういう乃絵も本気で嫌がっているようには見えない。以前の彼女ならこの手の友達同士のじゃれ合いには不快感を感じていただろう。石動乃絵も少しずつ変化をしているのである。
そんな時、道行く彼女たちを呼び止める声が聞こえた。
「ひーちゃん、ひーちゃん」
声の方に日登美たちが振り向くとそこには買い物袋を下げた中年女性の姿があった。
「あ、おばさん。久しぶりです」
どうやら彼女は日登美の親類らしい。
「この間尋ねたときにはひーちゃん留守だったもんね」
その後日登美と中年女性はしばらく世間話を続けた。所在のない桜子と乃絵。桜子も自分と無関係な会話に付き合うのは嫌いだったが、石動乃絵は桜子以上にそれが大嫌いだった。痺れを切らせた乃絵が先に帰ることを告げようと口を開く。
「わたし先に帰るね」
「あ、うんあたしも」
二人が帰るというのなら自分も一緒に行きたい。日登美はそう考えておばさんとの世間話を打ち切ろうとした。
「じゃ、じゃああたしもそろそろ…」
だがおばさんは日登美の制服の半袖の端を掴んだ。
「せっかくあったんだからここで言うけど…おばさんちょっとひーちゃんに頼みがあるのよ」
「なんでしょうか?」
日登美が向き直るとおばさんは真剣な表情を見せて声を細めた。
「ここだけの話なんだけど…」

日登美とおばさんの会話は少し気になったが、他人の家に関わることかもしれない。そう考えた桜子は乃絵と一緒に帰路を進めた。
「親戚も近くに住んでる人って多いよね。田舎だからかな」
「わたしは親戚とかいないけど」
「乃絵は孤独だな-。よしよし慰めてあげよう」
「別に寂しくないんだけど」
二人がそんな会話をしていると後ろから日登美の声が聞こえた。
「待ってよ~」
二人が振り向くと日登美が駆け足で近づいてくる。
「もう用事は終わったの?」
桜子の質問に日登美は首を横に降って答える。
「ううん、今から…ちょっと付き合ってくれないかな。良かったらでいいけど」
「内容次第だよ」
「そりゃそうか…実はね…」

日登美の話を要約すると、彼女のおばさんの家には春から親戚の女子大学生が通学のために居候をしていたという。だがこの9月から大学に通わずに引きこもりになってしまったという。より正確に言うのなら夏休みに入った頃から引きこもり状態を続けていたらしい。おばさん夫婦も夏休みの段階では何も言わなかったが、休みが終わって講義が始まった段階に入るとさすがに口を挟まずにはいられない。だがおばさん夫婦が何を言っても彼女は何も答えないという。そこで歳の近い日登美に説得を試みてほしいというのだ。
「なるほど。引きこもりですか」
桜子は腕組みをして考える。乃絵はそんな桜子を見て首をかしげた。
「引きこもりって何?」
桜子と日登美はため息をついた。
「あんたって成績いいわりに常識的なこと知らないよねえ」
「うんうん」
そんな二人の言い分に乃絵を口を尖らせる。
「学校で習わないことは知らなくてもしょうがないじゃない」
「まあまあ、別に責めてるわけじゃないよ」
日登美が乃絵を宥めていると今度は桜子が首をかしげた。
「でも、なんであたしたちまで?」
「うん。実はあたしも鷹美さんとはあんまり話ししたことないんだよね。親戚の集まりで何度か顔を会わせたことがあるくらいで」
「なるほど。応援要請か」
桜子も納得したらしい。だが乃絵はそれに口を挟んでくる。
「でも他人の家のことに首をつっこんでいいの?」
「うぐ…さっきの…」
「気にしないでよ。応援連れてってもいいって言われてるし、それにお小遣いももらっちゃったんだよね」
どうやら日登美は報酬を前払いでもらってしまっているらしい。
「なんかおごってくれる?」
「いーよいーよそんなに高いものじゃなければね」
どうやら報酬額はそれなりのものだったようで日登美も太っ腹だ。
「そんじゃ喫茶店でケーキセットあたりで」
「OK。乃絵はどうする?」
「付き合うわ」
そんなこんなで3人は日登美のおばさんの家に向かうこととなったのであった。

「ふぁああ」
戸屋鷹美が目を覚まして伸びをしたら時刻は4時過ぎだった。だが彼女は時計を見ようとしない。彼女の頬には枕代わりにしていたノートパソコンのキーボードの後がついている。そして液晶とキーボードが平面状になるまで開かれたノートPCのタッチパッドの部分にはよだれが付いていた。
「いつの間にか寝ちゃってたか」
彼女は布団の中にノートPCを持ち込んでネットサーフィンをして、そのまま寝落ちしていたのだ。
「トイレ行こう」
彼女が部屋のドアを開くとちょうどそこに一階の玄関の開く音が聞こえた。
「おじゃましま~す。親戚の日登美で~す」
「その友人たちです」
聞きなれない声に反応し、鷹美は慌てて部屋に戻って鍵を掛ける。
「日登美?親戚?そういえば年下の子にいたような…」
すると話し声と階段を昇る足音が聞こえてくる。鷹美は布団の中に潜り込んだ。
「なんで親戚の子が?」
小声でつぶやいた後で息を潜めているとやがてドアの向こう側から声が聞こえてくる。
「鷹美さーん、親戚の日登美でーす。ちょっと話をしましょう」
(こっちは話すことなんてないわよ!)
布団の中でひとりごちる鷹美。ドアノブをひねろうとする音が部屋の中に響く。
「鍵かかってるじゃん」
「大丈夫、鍵も預かってる」
日登美とやらは仲間を引き連れてどうやら鷹美の説得役をするつもりのようだ。やがて解錠音の後でドアが開かれて部屋の中に3人の異邦人が侵入してきた。
「勝手に入ってすみません。おばさんから話を聞くように言われてたんで…」
鷹美は布団から跳ね起きて日登美を睨みつけて叫んだ。
「もうほっといてよ!私はずっとここをねぐらにして生きていくんだから!」
そして再び鷹美は布団の中に潜り込む。
「何があったか教えて下さいよ」
「…無理して聞かないほうが…」
日登美の協力者にはどうやら多少は話がわかるものもいるようだ。
「でもずっと部屋をねぐらにこもりっきりって良くないよ」
するとそれまでずっと黙っていた乃絵が口を挟んできた。
「ここがねぐら?本当に?」
鷹美は乃絵の声に反応を返す。
「そうよ…ここは私のねぐらよ…」
布団をしばらく黙って見つめ続けた乃絵は立ち上がって部屋から出ていく。
「ちょ、乃絵?」
「ちょっとまってて…すぐ戻ってくるから」
乃絵はそういうと走って家の外に出ていってしまうのだった。

日登美は布団を突きながら鷹美に話しかける。
「いい加減教えてくださいよー。いじめですか?」
「大学でいじめってあるの?」
「いやよく知らない」
日登美と桜子はそんな会話を続けながらふと時計を見るとすでに四時45分近くになっていた。
「乃絵遅いな…」
「すぐに戻ってくるとか言ったのに」
そんな二人の会話に答えるように階段を駆け上がってくる足音が響いた。
「ごめん遅くなった」
「おそいよ…ん?」
息を切らせている乃絵を見て驚く二人。乃絵は白いニワトリを抱きしめていたのである。
「どうしたの?」
「それ学校のニワトリだよね。たしか名前は…」
「地べた」
乃絵はそう言うとニワトリを床に置き、ニワトリの正面に回り込んでしゃがんだ。
「お願い」
乃絵の声に反応するかのように地べたは鳴き声を上げて暴れ始めた。
「コケー!コッコッコ!」
「ちょ、乃絵何を」
暴れまわるニワトリに困惑する二人。やがて地べたは布団の上でも暴れまわる。
「や、やめてよ!」
そう叫んで起き上がる鷹美。乃絵はそんな彼女を見つめて微笑んだ。
「やっぱりここはねぐらじゃないって。地べたもそう言ってる」

乃絵が学校まで地べたを送り届ける間に鷹美と日登美、そして桜子は部屋の片付けをすることになった。片付けが終わったのは5時半ごろ。ちょうど乃絵も鷹美のところに戻ってきた。そんな乃絵に鷹美は文句を言おうと歩み寄る。
「あんたねえ…」
「明日から…あなたのねぐらを一緒に探してあげる。じゃあ…」
乃絵はそれだけ言うと鷹美の部屋を後にする。
残された三人はきょとんとするばかりだ。
「何なのあの子…」
「まあ変わってる子だよね」
「悪い子じゃないんだけどね」
そして鷹美は部屋の時計を見つめる。
(明日…私のねぐらを探す?どういうこと?)

翌日、乃絵と日登美、そして桜子は学校帰りに鷹美に所にやってきて、強引に彼女を外に連れ出した。
まず乃絵が鷹美を連れて行った先は噴水公園だった。公園についた乃絵は鷹美に尋ねる。
「ここはあなたのねぐら?」
鷹美は乃絵の言っている意味がわからず首を傾げる。
「え?違うんじゃないかな?」
「そう…じゃあ次」
その次はプール、その次は病院、スポーツ用品店、ファンシーショップ、ケーキ屋、ラーメン屋、バスターミナル、釣り堀などなど、乃絵は色んな場所に鷹美を引っ張っていく。
やがて乃絵たちは図書館にたどり着いた。
「ここはあなたのねぐら?」
もう何度も聞いたであろうそのセリフ。だが今回の鷹美には何かが違っていた。鷹美は何も答えずに図書館の中を見渡している。
「どうなの?」
乃絵の質問に鷹美は下を向いて答える。
「私…失恋したの…」
それまでほとんど口を閉ざしてきた鷹美が急に喋り出す。おどろく日登美と桜子。
「同じ大学の同じクラスの人で…告白したんだけど…ずっと本ばかり読んでる陰気な子は好きじゃないって…」
鷹美の目に涙が溢れ出す。
「でもしょうがないじゃない!私は本が大好きなんだもの!あの人も好きだったけど、おなじくらい本も好きなんだもの!」
そんな鷹美の独白を聞いた乃絵は微笑むのだった。
「つまりここがあなたのねぐらなのね」
「ねぐら…」
「ねぐらっていうのは鳥が羽根を休める場所、飛ぶのに疲れた鳥がまた飛べるように力を蓄える場所」
「力を蓄える場所…」
乃絵の言葉を反芻しつつ図書館を見渡す鷹美。やがて彼女は涙を拭って乃絵を見つめた。
「もし、ここが私のねぐらだというのなら…ここでずっと過ごせるようにしないと…それって私に司書になれってことなのかな?」
乃絵は鷹美の手をとって握りしめる。
「それはあなたが決めることよ」
鷹美は微笑みながら答える。
「私が司書になるためにはもっと勉強しないと…これ以上大学をサボるわけにはいかないわね」

「お待たせしました。本日のケーキセットでございます」
ウエイターがケーキと紅茶をテーブルに並べると桜子はツバを飲み込んだ。
「いやーただで食べるケーキは最高ですなあ」
「あんたなにもしてないけどね」
日登美のツッコミを無視しつつ桜子は尋ねる。
「で、結局鷹美さんはまた大学に通うようになったわけね」
「うん、失恋相手と顔を合わせるのは辛いけど、司書を目指す以上はちゃんと勉強しないとって」
「今回は乃絵のお手柄だよねえ」
「うん、やっぱ乃絵は一味ちがう子だよ」
そんな二人のやり取りを受けた乃絵はケーキをスプーンですくい取りながら答える。
「わたしは風にはなれないから…」
「どういうこと?」
「眞一郎は私が飛べるように、飛びやすいように風を起こしてくれた…でもわたしは風にはなれない…でも、だけども…」
乃絵がオープンテラスから空を見上げると、どこからか鳥が飛んできて喫茶店の近くの木の枝に止まった。
「それでも、そんなわたしでも他人のねぐらを探すことくらいはできるかもしれない…」
そんな乃絵を見つめる日登美と桜子。やがて二人は乃絵の左右の頬を突き始める。
「あんたは立派な風だよ」
「うんうん、すくなくとも鷹美さんにとってはね」
「やめてよー」
ひたすら頬を突く二人に乃絵は笑いながら抗議の声をあげるのだった。




###########

あとがき:

TV本編最終話に出てきた乃絵の友人キャラ、桜子と日登美はどっちがどっちかイマイチよくわからないのですが、とりあえずメガネの方を桜子としておきます。もしちがったら脳内で名前を入れ替えてください

本ブログでのtrue tears 二次創作小説では乃絵が主人公の外伝的作品も何本か脳内で考えているのですが、今回はそのうちの一本を
公開することにしました。のこりの乃絵メイン話である「つくりもののかち」と「Like A Rolling Thunder」については公開予定はありません。

今回のオリキャラ

戸屋鷹美(とやたかみ)
日登美の親戚。日登美の叔母の家に居候して大学に通う。

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2009-12-30(Wed)

テーマ別考察02.バイク事故が表すもの

第09話のバイク事故の後、比呂美は眞一郎の前で服を脱ぎ始める。これが第01話の脱衣所のシーンとの対比になっているのはすぐに分かることだが、どういう対比になっているかわかりづらい。ようするに比呂美がそれだけ吹っ切れたということなのだろうが、そこまで吹っ切れた理由が見えてこない。この対比を理解するためには今一度バイク事故について考えてみる必要がある。

で、このバイク事故について考えてみるがご都合ばかりが目について脚本的には洗練されたものとは言い難い。雪の中につっこんだから無傷でした。とか、すぐにタクシーで追いついてこれました。とか。そしてやっぱり物語的には比呂美がそこまで吹っ切れたことに説明をつけられない。ならば脚本ではなく演出側に理由を見いだせるのではなかろうか?

アニメの演出と言うのは基本的に本編で直接描かれていること、あるいは本編で描きたいことを形を変えて表現するものである。同じことを形をかえて重ねていくことで増幅させ受け手に伝わりやすくするものなのだ。このバイク事故もおそらくはなにか抽象的な意味を持たせてあるのだろう。

そうして考え直してみるとちょっとしたことに気づく。それは雪道をバイクで走るという事が危険だということである。危険な道を走る→危ない道→血縁疑惑のある相手との恋愛…という連想が出来るのである。ならば当然事故って転倒すると言う件は、血縁の証明ということになる。そしてその後の炎上し続けるバイクは、それでも消えずに燃え続ける恋の炎と連想出来る。

となると事故の時の石動純の台詞である「いっそドカーンとかなると諦めもつくのにな」は純の台詞ではあるものの実際には比呂美の“血縁が証明されれば壊れてなくなってしまう程度の恋なら良かったのに”という心情描写だと判断出来る。

そう、バイク事故は比呂美の眞一郎への思いが例え血縁が実証されたとしても諦められるようなものではないことを表しているのだ。
考えすぎだと言う反論もあるだろうが、ならば石動兄妹の恋愛感情が双方ともストーブとして、愛子の恋愛感情がグツグツと煮えたぎる煮物として表現されているのは何故なのか。true tearsでは、それぞれの恋愛感情がキチンと熱量によって的確に表現されているとしか考えられないのだ。

ちなみに第03話にて愛子は自身の恋愛感情である煮物を三代吉に食べさせて欲しいと頼まれて仕方なく食べさせるわけだが、当然本当は眞一郎に食べさせたい。続けて眞一郎に食べさせようとするけど、結局眞一郎は落としてしまう。で、それを三代吉が拾い上げて食べてしまうという形になっていて、完全にtrue tearsの愛子としての物語の展開がそのまま描かれてたりする。

で、話をまた第09話に戻すと、先に述べたようにアニメの演出とは本編で描かれていることや描きたいことを表すものである。つまりはバイク事故の心情描写も直接的に描かれているとは思えない以上、描きたいことを間接的に表していると判断出来る。ゆえに比呂美が炎上するバイクをじっと見入っているのは己の恋愛感情を見つめ直すと言う行為であり、つまりは比呂美は自覚的か無意識下の話かはともかく、己が眞一郎への想いを諦められないことを感じ取ったということになる。

そしてようやく眞一郎の前での脱衣シーンに戻る。自分が眞一郎を諦められないことを感じ取った比呂美が彼の前で服を脱ぎだすと言うことは、つまり相手を欲情させても構わないと言う意味になる。ここで第01話の着替え覗きを思い出してみる。あの場面では見られたほうの比呂美の方が平謝りをしていたが、あれは血縁疑惑のある相手なのだから絶対に欲情させてはならない。血縁疑惑を知らない眞一郎よりも知っている自分のほうがより気をつけなければならないと言う事から来ている。第01話の時点では気付けないことだが後から考えれば一目瞭然だ。

つまり結論として、第01話の着替えは相手を絶対に欲情させてはならないものだったのが、第09話の脱衣では欲情させても構わない…いや寧ろ欲情させた方がいいくらい…というように相手を欲情させることの是非という対比になっているのだ。

最後に、バイク事故の心情描写はかなり難しく、ちゃんと理解出来たものは少ないと思う。当方も脱衣シーンの対比という要素がなければ気づけなかっただろう。当方は基本的に脚本重視の人間なので演出理解力が乏しい。ゆえに、この極めてハイレベルな表現をさりげなく織り込めるなんてアニメの演出家というのはすごい人種なんだなと、ただひたすらに感心するばかりである。

2009-12-29(Tue)

テーマ別考察01.第11話エッチ仮説の総括

(1)第11話について

第11話において眞一郎が比呂美の部屋で朝食を食べるシーンがある。一瞬、情事の後かと視聴者に思わせ、その直後に比呂美が眞一郎に部屋を披露するセリフが入り、視聴者は情事の後がというのは思いすごしだと考える。だがこの場面、情事の後でないとすると色々と不自然な事が出てくるのだ。

まず、眞一郎の服が半脱ぎで中のシャツが見えている点。真冬にわざわざ上着のボタンを外しているのだ。

次に、比呂美の部屋の玄関にて眞一郎の靴が脱ぎ散らかされている点。普通、彼女の家に初めてお呼ばれした男は緊張でかしこまり、いつも以上に丁寧な行動をとるものであり、決して靴を脱ぎ散らかしたりなどしない。

次に、すでに合鍵を渡しているらしい点。比呂美が眞一郎に鍵掛を頼むシーンがあるが、アパートの玄関前に鍵をこっそり隠しておけるような場所は存在しない。つまりはすでに合鍵を受け取っているということになる。そしてこれはこれからいつでも抱いていいのだというサインである。初エッチの前にこんなサインを出すとは考えにくいのだ。

次に、朝食としては遅すぎる点。少しばかり海辺を歩いただけで昼どき間際になっている。真面目な比呂美が日曜だからって無意味に朝寝坊するとは考えにくい。さらにいえば比呂美が眞一郎を家に呼んだのであれば昼から用事があるのにゆっくりする時間もないようなタイミングで部屋に招いたことになる。わざわざ部屋に招くなら、もっと二人の時間を取れるようなタイミングで招待するはず。眞一郎の方から押しかけた可能性について考えるなら、ちゃんとしてない段階の眞一郎の方から比呂美と積極的に接点をとるとは考えにくい。これもやはり不自然である。

情事の後だと考えれば上記の不自然さはほぼ解消する。だが今度は別の不自然な点が出てきてしまう。

まず、ちゃんとしていない眞一郎の方から比呂美にエッチを迫ったりするのだろうかという点。眞一郎がそんな不誠実な事をするとは考えにくい。

そして比呂美のアパートの室内を眞一郎が初めて見るようなシーン。エッチ後なら眞一郎は比呂美の部屋を見ているはずだと普通は考える。これは二人がまだエッチしていないと判断してさせてしまう最も強力な材料であろう。

たしかにこの二点は強力な説得力を持っているのだが、最初に示した情事の後だとしないと不自然な点を説明できない。ならば視点を変えて考えてみるしかない。

まず眞一郎から比呂美にエッチを迫ったのではなく、比呂美の方から誘ったのだとしたら?

第10話について考えてみよう。あの話を比呂美視点で見てみれば、乃絵に圧倒的にリードされていたはずなのに何故か逆転勝利を収めてしまった。その理由が比呂美にはよく分からない。故に逆に考えれば今後また乃絵に再度逆転されてしまうかもしれないのだ。乃絵にまた眞一郎を取られてしまうかもしれない…眞一郎のちゃんとするという言葉を疑う訳ではないが、ちゃんとしないうちに乃絵に逆転されてしまうかもしれない。そして眞一郎は何時まで経ってもちゃんとしてくれない…比呂美はそんな不安とずっと戦っていたのだ。

そんな比呂美が不安から開放される方法として眞一郎を誘惑したとは考えられないだろうか?体を与えることで眞一郎にとって自分の重要性を上げれば、彼の心の中から乃絵を消しされるはず…そう比呂美が考えてもおかしくはない。もしあの朝食が情事の後だとするならば不安を抱えているはずの比呂美が朝食のシーンではやたらにはしゃいでいるのにも納得ができる。

そして眞一郎がアパート室内を初めてみるようなシーン。これは比呂美の誘惑が夜中に電話で行われたもので、眞一郎が比呂美の部屋に入ってからずっと室内は真っ暗でぼんやりとしか見えないような状況だったと仮定すれば説明がつく。

こう考えれば不自然な点は解消される。ではどういう展開でエッチしたのか、当方の推察を述べてみよう。

1.土曜夜から日曜にかけての深夜、比呂美は乃絵に眞一郎に取られてしまう悪夢を見て目覚める。夢の続きを見るのが怖くて眠ることが出来ない。「こんな時に眞一郎がいてくれたら」そして比呂美は思いついく。体を与えれば自分が眞一郎にとっての圧倒的な一番になれ、結果彼の心から乃絵が追い出せるのではないのかと。

2.比呂美はすぐさま眞一郎に電話をかける。「怖い夢見ちゃった。一人じゃ眠れないの。一緒に寝てくれる?」言うだけ言って電話を切る。眞一郎に考える暇を与えないためだ。誠実な眞一郎に考える暇を与えると誘惑自体が拒否されてしまうかもしれないから。

3.誘惑に気づいた眞一郎は急いで比呂美のアパートに直行する。おそらく地図は事前に渡されていたのだろう。そして鍵のかかってない玄関を開け靴を脱ぎ散らかして室内に入る。

4.明かりのついてない室内。だが窓から入る明かりのおかげでぼんやりと見ることはできる。眞一郎が暗い室内を見渡すとテーブルの横で座って待っている比呂美の姿を発見する。(部屋が暗いのは明るいと恥ずかしいから。テーブルの横にいるのは暗がりでも見つけやすいようにとの配慮)

5.そしてそのまま比呂美を押し倒してエッチに雪崩れ込む。そして情事に疲れた二人はそのまま寝入ってしまう。

6.朝遅く、眞一郎は寒さを感じて目覚める。そして慌てて辺りに脱ぎ散らかしてあった自分の服を羽織る。眞一郎よりも少し前に起きていて朝食の準備を始めていた比呂美は彼の目覚めに気づくと合鍵を渡し、また朝食の準備を続ける。比呂美から合鍵を受け取った眞一郎は夕べは暗くてよく分からなかった部屋の中を見渡す…そして第11話の朝食のシーンに繋がる。

とこう考えれば第11話内での不自然な点はすべて解消されるのだ。

そう考えると眞一郎と比呂美が別の玄関から仲上家に入るのも納得できる。もし夜中に出て行った眞一郎が比呂美を連れて同じ玄関から帰ってくればそれはエッチしてましたと白状するようなものである。だから二人は別の玄関から入るのだ。仮に朝方出かけた眞一郎が比呂美を連れて戻ってきたとしても、ほぼ家族扱いの比呂美が客用の玄関から中には入らなければならない理由が存在しない。

そしてエッチ仮説を認めるなら風呂上りの比呂美が足で下着を取ろうとして失敗するシーンも特別な意味を持ってくる。今回の話は比呂美が体を与えることで眞一郎の心から乃絵を追い出そうとするが、自分と肉体関係を持っても眞一郎にとって乃絵が大事な存在であることにかわりはなかった。つまり演出的には、はしたない手段(自分から足を開く)で目的を果たそうとして失敗したということを表していると考えられるのだ。

さらにいえばこのシーンにて比呂美はつま先を伸ばしている。つま先を伸ばすと言う現象は女性が性的な快感を感じていることの記号である。これは比呂美が初体験にも関わらず眞一郎との情事にて性的快感を感じ、女が性感によってつま先を伸ばしてしまうことを実体験として知り、そのことを思い出しながら自分でつま先を伸ばしてみたということではないかという推察も十分に可能なのである。
で、またはしたない手段で目的を果たそうとしての失敗の話に戻るが、実際に第11話のラストで純からの乃絵の行方不明の連絡を眞一郎に告げた後、慌てる眞一郎の様子を電話越しに感じた比呂美は自分が体を張ってなお、眞一郎の中で乃絵が重要な所に居続けているのに気づく。そこで比呂美は目論見が失敗だったと理解する。そしてそんな石動乃絵を激しく憎み、鬼のような形相をみせるわけだ。
これまでの説明で第11話エッチ仮説が成立するのが理解できただろう。ただこれだと一見第13話と矛盾しているように見える。ようするに第13話も第11話同様に隠蔽処理が施されているのだ。


(2)第13話について

第13話にて比呂美は眞一郎を自分のアパートに招き誘惑をする。このときのケーキはとっておきのご馳走、すなわち誘惑を表している。一見エッチ仮説と矛盾するようであるが。この時比呂美は眞一郎の持っているカップに口をつけている。男が手に持っているものに両手を添えて口をつけ、中の液体を飲む…つまりこれはフェラチオの記号である。もしこれが初エッチの誘惑だとしたらフェラチオの記号は行き過ぎである。だが既にエッチを済ませた後だとしたら「この間よりももっとすごいことを」という更なる誘惑として成立するのだ。

このとき、眞一郎が誘惑を拒絶するのは比呂美がTPOをわきまえてないからであろう。「こんな明るい内から何言ってるんだ」ということである。逆に言えば第11話の誘惑はTPOをわきまえたものだったということになる。

そして比呂美のセリフ。「私の涙が綺麗だなんて嘘。どんどん、どんどん、嫌な娘になっていく」の部分。わざわざ「どんどん」を二回繰り返すのは、乃絵に涙を見せた時点で、もう十分嫌な女になっているのにさらにもう一段階分、嫌な女度が上昇していることを表している。もしエッチ仮説を認めないとそこまで嫌な女になっているのが説明がつかない。、

そして夕方の180度開脚のシーン。演出的には自分から股をひらくのだけうまくなったということを表しているのだがこれはエッチ仮説を認めなくても成立する。問題は脚本的な部分である。

嫌なことを考えないようにするために体を動かすのは比呂美の習性である。おそらくは色々な運動をやったついでに開脚運動も行ったのであろう。そして開脚が成功した後、比呂美は自嘲的な笑を浮かべる。もし単に今まで出来なかったことが出来るようになっただけなら、そんな自嘲など不要である。

実は激しい開脚運動というのは処女膜破損の可能性が高い運動である。もし比呂美が自覚的かどうかはともかく処女膜を守るために開脚運動を手加減していたと仮定するならば、エッチのあと、すなわち処女膜を失った後で初めて本気で開脚運動を行えたと考えられる。そして開脚の後で比呂美は気づくのだ。体を張って得たものが開脚運動の成功だけであったことに。

ひょっとすると比呂美は自分の行った誘惑によるエッチが自分自身の思い出に対する裏切りだと気づいたのかもしれない。ロマンチックな流れなど欠片もない、ただやるだけのセックス。こんなものが良い思い出として残るわけがない。誰よりも思い出の大切さを知っていたはずの自分が自ら思い出作りを裏切ってしまったのだと言うことに。

そして比呂美は気づいたのだ。これ以上嫌な女にならないように気をつけようと思った矢先。もう自分がどうしようもないほど嫌な女になっていることに。自分を嫌な女にしているのは眞一郎への思いだ。諦めようか。でも諦めたくなどない。そんな思いが堂々巡りになってしまった比呂美はもうどうしていいか分からなくなる。

そして朦朧としながら比呂美は二人の原点である竹林に向かう。ここなら何か答えが出るかもしれない。などと考えて。

でも比呂美が答えを得る前に眞一郎が現れてしまう。今の比呂美は眞一郎の結論が例え自分への告白だとしても聞きたくはない。話をはぐらかそうとするも今の眞一郎には通じない。そして眞一郎から「付き合おう」と言われるも拒否してしまう。

だがちゃんとしてきた眞一郎には比呂美の二度の拒否も通じない。そしてプロポーズまがいの告白。比呂美は例え自分がどんなに嫌な女になったとしても眞一郎なら一生受け入れてくれるのだと理解し、自分自身の嫌な女の部分も受け入れていこうと決意するのだ。

もちろん眞一郎は比呂美が嫌な女だなどとは考えてない。ただ面倒な女だとは感じているだろうが。そして比呂美がどんなに面倒な女でも構わないのだと示すためにプロポーズまがいの告白をしたのだろう。

比呂美の心理の説明を終えたので、もう一度180度開脚に話を戻す。この場面において脚本家が処女膜破損の可能性を知らなかったのではないかという論点もなくはないが、女性である岡田麻里が開脚による処女膜破損を知らないなどとは考えにくいであろう。

さらにいえば、もしエッチ仮説を認めなければ比呂美は初エッチの可能性がある日にわざわざ膜破損の可能性のある運動を真剣に行なっていたと言うことなる。

もちろんスポーツマンの比呂美は第11話以前にすでに激しい運動で処女膜を失っていると言う可能性も存在する。だがこれまで比呂美はスポーツマンである以前に一人の女として描かれていた。故に恋愛がらみのトラブルがバスケの練習など影響を及ぼし転倒したりしていたのだ。そんなように徹底して女として描かれていた比呂美が愛する人とのセックス以外で処女膜を失うことをよしとするだろうか?

でも比呂美の表層が真面目なスポーツマンであるのは確かである。だから当方は比呂美は開脚運動にて無意識にブレーキをかけていたが本人には自覚がなく全力で開脚しているつもりだったのではなかろうかと考えている。これがもっとも表層と深層の剥離した比呂美らしいと確信している。

ちなみに眞一郎の母が二人に与えるチーズケーキ。チーズとは女性器の臭いに似ているとされるもの。ケーキは先に述べた通りとっておきのご馳走。つまり母は眞一郎たちの肉体関係を認めるということを示している。まだ二人が肉体関係を持ってないと思ってるなら、わざわざこんな事を示すとは思えない。やはり母親は二人の関係について感づいているということであろう。


(3)総括

true tearsの第11話以降は恋愛がらみにおいて各話独自のサブテーマを持っていると推察出来る。

第11話は安易な肉体だけの繋がりの否定。
第12話は恋愛のことしか考えない女と恋愛以外のことも考える男とのすれ違い。
第13話は比呂美が自分の黒さに耐えられなくなり、原因である眞一郎への恋を諦めようかと迷う話。

どれもかなり魅力的なテーマだと思うのだが、残念ながら第11話と第13話のテーマは存在を理解するのが困難になってしまっており、視聴者に全く伝わってない状況である。なぜこんなに困難なものにしてしまったのか?

それはおそらくは主人公を体を張って誘惑したものが最後に主人公を射止める展開が一部の者に否定されDVDの売上にも響いてしまうのを恐れたのであろう。特に乃絵派を自称する者たちにはこの展開を受け入れられない人も多いだろう。だから簡単には気付けないように隠蔽処理を施したのだと思われる。

実際この隠蔽は強力で一度見ただけでは当方もその真実に気づくことは出来なかった。ネット上で気づいているものは多分当方だけであろう。

正直この隠蔽処理は行き過ぎで確実な失策だと当方は確信している。この隠蔽をもっと軽いものにしておけばtrue tearsはもっと名作足りえたと思う。

ちなみに比呂美の部屋のロフト構造も隠蔽処理の一部である。もしベッドが床の上にあれば比呂美は床でなくベッドがいいと眞一郎に要求することも出来る。もし比呂美にベッドの上を要求されたら眞一郎は比呂美の部屋をきちんと見回して部屋の状況を把握するだろう。眞一郎が比呂美の部屋を見渡さないようにするためにはロフト構造が必要なのだ。

2009-12-29(Tue)

テーマ別考察目次

各話考察をテーマ別にして読みやすく分かりやすいように書き直してみることにしました。


キャラ分析01.湯浅比呂美の精神分析(書き直しなし)

キャラ分析02.湯浅比呂美の両親像(書き直しなし)

キャラ分析03.湯浅比呂美は策士にあらず




テーマ別考察01.第11話エッチ仮説の総括

テーマ別考察02.バイク事故が表すもの

以下順次追加予定


2009-12-28(Mon)

キャラ分析03.湯浅比呂美は策士にあらず

誤解している人もいるようだが比呂美は策士などではない。なぜならば彼女がしているのは策略などではなくその場しのぎにすぎないからだ。

第02話にて比呂美は乃絵と友達になりたいと眞一郎に紹介を求める。これは眞一郎の身近に自分という女がいることを乃絵に知らしめるという、言わば警告なのだが、実際には彼女自身、自分が何をしたがっているのか分かっていない。それにもし乃絵が噂どおりのプレイガールだったのなら自分と眞一郎との関係を問いただされ答えに窮するだけである。

その前の段階での眞一郎に乃絵の悪い噂を教えるという部分も、眞一郎が自分以外の女に近づくのを防ぐ行為なのではあるのだが、これは知人に悪い友人が出来ないか心配する一般的な行動だとも言える。故に策略とは呼べない。

第03話で比呂美は自分の想い人が純であると嘘をつくのだが、これは朋与に自分と眞一郎の話題を出されないようにするためのもので、そのために都合が良さそうな二枚目で他校の人間である純を選んだのだろう。だが純が乃絵の兄で、乃絵と眞一郎は友人なのだから、ともすると自分も純と接点を持つ可能性を考慮していない。策略と呼ぶには流石に陳腐だろう。

第05話で眞一郎とともに下校しマフラーをかけてやるのは、単に眞一郎の心が自分から離れていくのが嫌だという比呂美の無意識の発露だろう。当然これもまた策略とは呼べない。

同じく第05話での乃絵との昼食を無視して昼練習をしているのは、単に乃絵と一緒にいたくないからで、バスケの練習をしているのは乃絵に対して言い訳をするためであろう。別に約束をしたわけでもない以上、これも策略とは呼べない。

第06話の兄妹疑惑の露呈はこれは比呂美にとってはマイナス要素になる。策略とは真逆の行為。

第08話での純とのフリースローゲーム、自分に有利なルールに変えさせるのは、純には嫌われても構わない…むしろ嫌ってくれた方がいいという想いとどうにかして乃絵の悪い情報を聞き出したいという想いが重なったからであろう。これもまた策略と呼ぶには足りなすぎる。

同じく第08話で雪の中純にバイクに乗せることを強要する件は自暴自棄になった結果であり、当然策略ではない。

第09話にて眞一郎の前で服を脱ぎ始める件は今回のバイク事故で自分が眞一郎を諦めることなど例え血が繋がっていたとしても出来はしないのだと無意識下で認識したが故の行為。相手を欲情させても構わないということなのだが、真面目な眞一郎にふしだらだと思われる可能性を考慮していない。やはりこれも策略とは呼べない。

第10話での比呂美の仲上家を出る決意。これは上手くいかない事があった場合、根本的な原因を取り除いたほうがいいという一般論に基づくもので、策略などではない。ちなみに彼女は少し勘違いをしている。彼女は自分の様々な不幸の要因が眞一郎との同居に甘えようとしたことにあると考えたようであるが、実際には少し違っていて、彼女の眞一郎への甘えが中途半端であったためというのが正解である。甘えるなら同居してキチンと甘えて、甘えないなら最初から同居しない。これが彼女のとるべき選択肢だったのだ。

同じく第10話での引越し直前においての自分の真意の告白。これもまた話の流れでつい喋ってしまっただけで、この程度で眞一郎が乃絵から自分に鞍替えしてくれるとは彼女も思ってない。これもまた策略には足りないのだ。

第12話で乃絵に自分の真意について伝え、身を引いて欲しいとする件も、眞一郎自身が決着をつける事に自分がでしゃばってしまい、よっとしたら眞一郎に嫌われてしまうかもしれないという可能性を考慮していない。

同じく第12話にてそのことを眞一郎に伝えるのは彼が乃絵と会う必要性を無くしたいからであろうが、乃絵の為に描いたらしい絵本が存在する以上、眞一郎が乃絵と直接会うのは避けられない。これもまた策略と呼ぶには足りないのだ。

第13話にてクラスメイトの目前で眞一郎を自宅へと誘う件は、周りの目を気にしている余裕がなくなっていて、そのついでに眞一郎に近づくあさみに警告をしただけのこと。

同じく第13話のフェラチオの誘惑、まだ明るい内からの誘惑を眞一郎から否定される可能性を考えておらず、実際に否定されてしまっている。これもまた策略と呼ぶには陳腐なのだ。

で最後の竹林の告白拒否も彼女自身、自分の嫌な女の部分と優等生の部分との矛盾に苦しんでいて、自分を嫌な女にする原因となっている眞一郎との交際を拒否したのだが、彼女自身、自分が眞一郎を諦められないことを一番良くわかっている。もうどうしたらいいのか彼女にも全く分からなくなっていたからなのだ。でも結局眞一郎が比呂美の矛盾自体を含めて受けいれてくれるから比呂美もまた矛盾した自分をそのまま受け入れる決意をしたのだが。んで、目標自体を決められてないのでこれもまた策略などではないのだ。

結局比呂美の行動はすべてその場しのぎによるもので策略などと呼べるような代物ではない。ただ頭のいい彼女はその場しのぎをその場にある材料だけを用いつつも普通の人よりも深い計算によって行っている。その深めの計算によるその場しのぎが彼女をやや策士っぽく感じさせているだけである。

そのそも第11話での乃絵の行方不明の連絡を眞一郎にするのを躊躇いつつも行うのは、眞一郎に伝えず、そのことについて純に嘘をつくという策略を一瞬考えるも、彼女自身がその策略を否定したからである。つまりは彼女の優等生の部分が策略を巡らすという行為を否定したのだ。比呂美の表層の優等生の部分は彼女にとって最大のアイデンティティである。故に彼女は策略を巡らさない。そしてその優等生故に第13話で彼女は己の中の矛盾に苦しんでしまうのだ。

ちなみに第02話での雷轟丸の墓の作り直しはたんなる悪戯。ちょっとしたその場のの思いつきに過ぎない。そもそも彼女は乃絵にこの「正論に悪意を込める」という行為が見抜かれるとは思ってない。この悪戯は相手が正論に反発しても勝ちだし、相手が悪意を見抜けなくても勝ちになる。だが乃絵は比呂美の正論を認めた上で悪意だけを否定した。故に比呂美は乃絵に完敗してしまうのだ。

話がそれてしまったが、いずれにせよこの悪戯もその場しのぎと同様にその場の材料だけを考慮して行うことに変りない。比呂美は目の前…その場にある材料を高速で計算することはできても全体を見通した計算…つまりは策略を行えないのだ。
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